なんで黄色いの?

朝晩がめっきり秋めいてきましたね。
今週も、下邨の文章にお付き合いください。

私の、子供の頃のたわいもない疑問の話です。
私は、「なんでだろう?」ばかりの子供だったそうです。両親をつかまえては、「ねぇ、なんで空は青いの?」「葉っぱは、なんで緑色なの?」「なんで、卵の黄身は黄色いの?」と質問責めだったようで。
父なんて、「黄色いから黄身って言うんだ! 早くご飯食べちゃいなさい!」と。我ながら、面倒くさい子供でしたね…(笑)

だいぶ大人になってから、この父の対応を母に話したら、「真剣に応えてやれなくて、すまなかったわねぇ」と謝られましたが、当時の私にとって、それら、たわいもないことが、この世界がどうかたちづくられているかの、最大の関心事だったのです。
そんな、大人になってからの笑い話を父にもしたかったのですが、病気で看取った後なのが悔やまれます。

さて、実はこの子供の頃に養われた疑問意識、デザインではけっこう重要なのです。

まず、対象となる事象を観察しているということ。
そして、なんらかの疑問を抱くということ。
さらには、その疑問を解決するためには、どの様な行為が必要か思考する、ということ。

大学在学時、とある教授が講義の開始前に仰っておりました。
「全ての事象を疑ってください。これから私が話す講義さえも。」
いまでも心に残っている言葉のひとつです。

今回は、たわいもないトピックであったので、最後くらいは、子供の頃からの私のこの意識を、ステキな詩の一説を引用して、表現したいと思います。

すべてこれらの命題は
心象や時間それ自身の性質として
第四次延長のなかで主張されます

〈宮澤賢治/『春と修羅 序』より抜粋〉

「白」で塗ることの意味

皆さまは、「消しゴム」という道具をなににお使いでしょうか?
鉛筆で描いたものを消す道具でしょう、という答えももちろん正解。しかし、鉛筆や木炭で描かれるデッサンの場面では、もうひとつの使い方があります。それは、「光」を描くという使い方です。

様々な色彩が折り重なる水彩画や油彩画とちがって、鉛筆や木炭でおこなわれるデッサンでは、鉛筆や木炭の素材色である「黒色」と、描かれる「紙の色」しか使えません。ここでは、便宜上、紙は「白色」だと仮定します。そこに鉛筆や木炭の調子を淡くつけたり、グラデーションをつけたりして、無限の白と黒の段階をつくり表現していくのです。

そこで、消しゴムや練りゴムの役割はなにになるかというと、炭の粒子を除去することになるわけです。当たり前ですが、なにも描いてないところに消しゴムは掛けませんよね。つまり、「白色」に戻す作業は冒頭で述べた、「光」を描く作業になるわけです。

さて、ちょっと話題を変えます。

印刷においても、「白色」はとても特殊な色です。
勘の良い方なら、もうお気づきかも知れません。私は先ほど、「紙の色」を便宜上「白色」だと仮定しました。そう、「紙の色」は本当は「真っ白」ではないんです。それぞれの紙が特有の色を持っています。色紙はもちろんのこと、限りなく白に近い色でも、真っ白ではないのです。

皆さまがお持ちの、家庭用インクジェットプリンターに「白色」インクはありませんよね?
そして、「紙の色」も「白色」ではない。こんな時に、「白色」インクはとても重要なんです。

ここまで、なにを申し上げたかったかというと、一見なにも施されていないと思われるような場所にも、「意味」があるということなんです。

「描くこと」に意味があるように、「消すこと」にも意味はある。
「なにもない」ということにも、「なにも置かない」という意志がある。
「白色」にするにも、ここは「白色」インクを使ってください、というデザイナーの意図があるんだ、ということです。

身近なお菓子の透明なビニールパッケージデザインをよく見てみてください。「白色」インクが見つかるはずです。今週のエッセイは下邨尚也がお送りいたしました。

「víz PRiZMA」ロゴについて

víz PRiZMAロゴ

弊社は先日、新ブランドを発表いたしました。

言葉の意味などは、先のブランドリリースの投稿で明示しましたので、今回はそのブランドロゴについて下邨が語ってみようと思います。

元となる欧文フォントは、「Optima」という特徴のあるサンセリフ体をベースにしています。このフォントはサンセリフ体でありながら、縦横の線の太さが異なり、非常に優美でありながら力強さを兼ね備えます。「víz PRiZMA」というブランドネーミングが決まった瞬間に、このフォントが相応しいなと感じました。

また、柿田・船木の意見も取り入れ、Rの斜めのラインを少しカーブさせたり、アクセントとして、“ i ”を小文字にして大きさを整えたりしています。

ブランドカラーについては、上品に、けれども意志を強く、思い切ってモノトーンとして、少しだけ黒の濃度を落としております。彩度を持たせなかったという点で、皆さまの創造の余地を残し、且つ、どの様にも変容しないという二律背反した意味を含ませました。これは“偲び”や“祈り”という行為を強く意識したものです。創造とそれらの行為は、一見、類似性が高いように見えますが、思考のベクトルが、創造では外側に、“偲び”や“祈り”では内側に向いており、相反するものなのです。後者は非常に独自性が高く、ある対象に対して、個々がそれぞれ抱く強い感情であるからです。
同じ理由から、「víz PRiZMA」はロゴタイプのみとし、ロゴマークは持たないデザインとしました。

もう少し細かく説明したい意味付けもあるのですが、サービスの詳細に触れるため、それら解禁の時に、また改めて語りたいと思っております。

5月にサービスの詳細をお知らせします。
引き続き、今後の「víz PRiZMA」をどうぞお楽しみに。

「víz PRiZMA」https://viz-prizma.com/

スティーブ・ジョブズの”Connecting the Dots”

こんにちは。柿田京子です。先週のフォントの話を続けます。

最初に、下邨の問い「漫画に複数のフォントが使われるのはなぜ?」の答え。

ひとつは、読みやすさ。出版の活字は明朝体が一般的ですが、週刊漫画誌のように紙質が悪いと明朝の細い横棒が見えにくい。そこで、横棒使いの多い漢字にはゴシック、平仮名は明朝と、混合字体が定着していったそうです。

もうひとつは、ズバリ、漫画の世界観を効果的に表現するためです。その時々のストーリー状況を的確に表すために、ナレーションと感情的な叫びでは、フォントが変わります。紙面に刷る時の読みやすさも考慮しながら、漫画の世界観を伝え、読者の没入感を高めるために、漫画ではフォントが複数使われます。

漫画は、文字(フォント)選びも含めての藝術なのですね。

パソコンにフォントを採り入れたのは、皆さんよくご存じのアップルの創始者、スティーブ・ジョブズです。

スティーブは大学に入学するも、退屈な必修授業を前に、学ぶ意義と高額の学費に悩んで中退。行き場のないキャンパスを18ヶ月余り放浪しながら、心惹かれたカリグラフィー(レタリング)の授業に潜り込み、あてもなくその手法を習得します。

そして10年後、初代マッキントッシュ・コンピュータを世に出そうとした時、突如この経験を思い出し、コンピュータにフォントを採りこむことを思いつくのです。

スティーブは語ります。

人は、将来を見据えながら点を結ぶことはできない。私たちにできるのは、振り返って点を結ぶことだけ。いま手掛けている、心惹かれるひとつひとつが、将来何らかの形でつながると信じて、やり続けるしかないと。そのために、自分の勇気であれ、運命であれ、何であれ、何かを信じてやり続ける。自分の心に従うことに自信を持ち、それがたとえ一般的な方法から外れようとも、やり続けることの意義を、スティーブはその生涯をもって教えてくれたのだと思います。

点を結ぶ話は、スティーブが2005年、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの一節です。折に触れ、このスピーチを聞き返しながら、現在のeach toneの歩みもまた、未来へつながる点のひとつであることを信じて、一歩一歩進んでいきたい思います。

フォントがつくる世界観

こんにちは、下邨です。

久しぶりの投稿となりますが、やはり私の専門領域であるデザイン系のトピックを採りあげようと思います。

みなさまはフォントについて、どれくらい気にされているでしょうか? 私のように仕事柄、常に向き合っている方も居れば、あまり気にされたこと無いという方もおられるかも知れません。日本語フォントであれば、明朝体とゴシック体。アルファベットであれば、セリフ体とサンセリフ体ぐらいの違いはご存じでしょうか?

私たちの周りはフォントに包まれています。電車に乗れば駅名の看板書体から、車内の広告に溢れる文字。ほぼ一人一台は持っておられるであろう、スマートフォンの中。この投稿をご覧いただいている時点でも、フォントの恩恵を享受しておられるわけです。

では、フォントの種類により、受ける印象が変わることを感じたことは無いでしょうか?

極端な例えをしますが、こんな弁護士事務所のロゴマークにどんな印象を持たれますか?

法律事務所フォント

また、こんなティーン向け雑誌のキャッチコピーはどうでしょう?

雑誌コピー

フォントが変われば、イメージが変わることを実感頂けたでしょうか。

このように、私たちはフォントから「文字の内容以上」の情報を受け取っています。逆に言うと、デザイナーは「文字以上のイメージ」を込めて、制作をしています。each toneのロゴにも様々な想いを込めてデザインをしているのです。

ここまで読んでくださった皆さまは、何故、マンガのセリフに使われるフォントが明朝体とゴシック体混合が多いのか、気になってくるはずです。ご興味がありましたら、調べてみてください。

また来週の投稿をお楽しみに!

「each tone」ロゴマークに込めた想い

each tone ロゴ

みなさま、再びの登場、each tone の下邨です。
前回の投稿で、私がこの「each tone」というアートプロジェクトに参加することが決まり、最初に手がけた弊社社名について、お話しいたしました。今回は弊社ロゴマークについてお話ししてみようと思います。

創業メンバーが集った東京藝術大学 DOORプロジェクトの命題は、『「多様な人々が共生できる社会」を支える人材を育成する』とされています。その意志をふまえ、弊社も「多様な価値観を持つ人々が、ひとりひとりが描く違う幸せを尊重しながら、且つすべてのいのちが幸せになれるように、それぞれの持つユニークな才能を、存分に発揮できる環境を整えること。それぞれの発想・アイデアを尊重し、理解すること。多彩なアイデアを磨き合い、つなぎ合い、社会課題と結びつけ、今より少しでも良い世界をつくること。」を使命と考え、ロゴマークへとその意識を落とし込んだ次第です。

ロゴマーク内側の形状は私たちの存在する惑星であり、中にはゴツゴツした存在や、丸みを帯びた個性なども共生しながら、ドローイングのような線もあり、音楽の譜面記号らしきものも見受けられます。これらは創業メンバーが実際にペンを持ち、時には利き手では無い手で描いた偶発的なものも取り込みました。そう、「偶発」の積み重ねが歴史を経た後に「必然」に成るように。そして、常にそれら「必然」からは、次のアイデアの新しい芽吹きが見られるように。

コーポレートカラー2色についても、意味付けがあります。
青みを帯びた緑色は、古来からの日本の伝統を込めています。例えば、「青々とした緑」という慣用句があったり、「青信号」は緑がかっていたり。平安の頃の日本においては、「青い」とはブルーからグリーンまでも含まれていたとされています。そんなグラデーションの掛かった表現にとても好感を持ちました。
また、一際目を引くオレンジ色には、私有財産を持つことを禁じられたインドの出家僧侶の衣装から着想を得ています。僧侶達は、衣服も例外なく所持することを禁止されたため、ご遺体が纏っている衣服を、さらに草木や金属の錆などで染め直し、着ていたとされています。様々に色を重ねた結果、あの色になっている訳です。
それぞれを組み合わせた時の響き合い方もくみ取り、この2色を採用しました。この決定をした日、メンバーの2人が偶々この色味の服を着ていたことは、なにかの偶然でしょう。または、後世の笑い話にでもなると良いのですが(笑)。

話が長くなってしまいましたね。こんな経緯で、each tone はこのロゴマークに決定いたしました。皆さまに愛して頂けたら嬉しいです。

「each tone」という社名の由来

each tone ロゴ

みなさま、はじめまして、each tone の下邨です。
初めての投稿をするにあたり、どのようなトピックにしようかなと考えましたが、私がこのアートプロジェクトに参加することが決まり、最初に手がけた弊社社名とロゴマークについて、やはりしっかりとお話ししてみたいなと思いました。今回は、弊社社名の由来についてお話しいたします。ご一読くだされば幸いです。

弊社は東京藝術大学 DOORプロジェクトを受講した有志により設立されました。起業メンバーそれぞれの様々なバックグラウンドを踏まえ、その講座の学びで気づかされた、「藝術の力」で社会問題を解決できるかもしれないという可能性を信じて、活動しています。事業内容を「アートプロジェクト」と呼んでいることや、メンバー全員の肩書きに「Artist」が付いている点も、そうした理由からです。

「each」は「それぞれの」の意であり、続いて、こちらが弊社名の肝でもあるのですが「color」でもなく、「sound」でもなく、「tone」を用いました。「tone」は色調であり、音色であり、口調であり、その場の雰囲気や気分も含めて表す言葉です。それらはどの様な人であれ持っており、その人自身を象徴する確固たる個性であります。その点を強く意識し、あえて「tone」を選びました。「Artist」を標榜するにあたり、多くの方は、その言葉から音楽家や美術家を連想するかも知れません。しかし、「art」の語源は本来、「技、技術」という意味であり、それぞれの様々な専門性を持って社会人教養講座に集った我々は、紛れもなく「Artist」である、というのが私たちの強い想いです。多様な専門性を駆使し、社会問題の解決に対峙する。それが弊社「each tone」なのです。

「アートプロジェクトの企画・運営」だけでは伝えきれない、弊社の想いや活動がまだまだ沢山ございます。今後もこのような投稿にて、少しずつ皆さまにお伝えしていけたらと存じます。お目にとまった際は、お読み頂けましたら弊社社員一同、大変励みになります。

親愛なる「Artist」の皆さま、今後とも弊社「each tone」をよろしくお願いいたします。