【特別インタビュー 3】だれも見たことのない世界をデザインする 瞳の記憶を未来へ 「víz PRiZMA」ブランドづくりへの挑戦

会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)。今夏始動するこのサービスは、インターネット上で、「この世」と「あの世」をつなぐ。さらに、生前から他界、その後の遠い未来まで、このサービスが紡ぐ時は、人の一生よりはるかに永い。まだだれも目にしたことのない場所、時代を、どのようにデザインするのか? どのように表現するのか?

「víz PRiZMA」のブランドサイトのデザインをしたSHIMA ART&DESIGN STUDIOの小島沙織さんと島田耕希さん。そしてeach tone社 Chief Designing Artistの下邨尚也が、「víz PRiZMA」ブランドづくりへの挑戦を語ります。

小島・島田・下邨 写真
(左から)小島沙織さん、島田耕希さん、下邨尚也。
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víz PRiZMAという世界観の構築

下邨 「víz PRiZMA」は、「瞳」(虹彩)から拡がる世界観でできています。ひとは瞳で世界をとらえ、自身の内なる世界を、瞳を介して世界へ発します。時として、目は言葉よりも雄弁です。瞳は、視力の有無にかかわらず、本質的な世界をとらえます。瞳(虹彩)は黒目のまわりのドーナツ型の部分ですが、その文様は、その人の独自性、唯一無二の存在であることを象徴する部分です。虹彩の模様は、成長過程で、まばたきなどでつくられるシワですので、DNA由来ではありません。よって、DNAが同じ一卵性双生児であっても、虹彩の模様は異なり、虹彩データは認証に使われたりするのです。虹彩のことを英語でiris(アイリス)と言います。アイリスは、ギリシア神話に登場する「虹」の女神の名前。虹は、この世と天界を結ぶ懸け橋で、アイリスは、ここを司っているのです。瞳(虹彩)は、まさに、この世とあの世をつないでいるといえるでしょう。

ブランドロゴタイプは、優美でありながら、力強さを強く意識しました。元となる欧文フォントは、「Optima」という特徴のあるサンセリフ体をベースにしています。「víz PRiZMA」というブランドネーミングが決まった瞬間に、このフォントが相応しいなと感じました。
ブランドカラーについては、上品に、けれども意志を強く、思い切ってモノトーンとして、少しだけ黒の濃度を落としております。彩度を持たせなかったという点で、皆さまの創造の余地を残し、且つ、どの様にも変容しないという二律背反した意味を含ませました。これは“偲び”や“祈り”という行為を強く意識したものです。創造とそれらの行為は、一見、類似性が高いように見えますが、思考のベクトルが、創造では外側に、“偲び”や“祈り”では内側に向いており、相反するものなのです。後者は非常に独自性が高く、ある対象に対して、個々がそれぞれ抱く強い感情であるからです。同じ理由から、「víz PRiZMA」はロゴタイプのみとし、ロゴマークは持たないデザインとしました。

このような、未知な世界観にあふれたサービス。お二人は、このお話をした時に、開口一番「興味深い」と仰ってくださいました。どの辺りを興味深いと思ってくださったのでしょう?

小島 「祈り」という行為にすごく興味がありました。私は普段から、西洋美術史を語る上で切り離せない「キリスト教」の勉強をしていて。信仰心が薄いとされる日本人が、どうやって「祈り」という場を持つのか。どうやって「死」に立ち向かっていくのか。そういったことに向き合っていくブランドのこれからに興味を持ちました。

下邨 音楽の発生もキリスト教の存在は外せないですよね。グレゴリオ聖歌とかもそう。

島田 僕は、みえるもの・みえないものにすごく思い入れがあって。みえないけれども感受出来る世界をブランドの視点を通して表現してみたいなと思いました。詩人・吉野弘さんの「眼・空・恋」という詩が好きで。「水晶体」をモチーフにしている詩なのですが、打ち合わせでお話しを伺ったときに思い浮かべました。あとは、虹彩を個人識別に使っているところにも興味をもちましたし、既存のお寺や墓地を否定するわけではなく、多様な選択肢のひとつとしてサービスがあることに共感しました。

下邨 ブランドサイトのビジュアルを生み出すことのご苦労や工夫ってありましたか?

島田 “偲び”や“祈り”という繊細なテーマに触れることの難しさを感じました。併せて、ブランドサイトとしての訴求性も兼ね備えないといけないなかで、2回目の打ち合わせで、下邨さんの「意志を伝えていくというよりは、ただ、そこにあることがいいのです。」という言葉を一番心に留めました。víz PRiZMAのロゴやサービス概念から、「水」「光」というイメージは早い段階からイメージしていまして、着地の「感情」から、どういった表現、形、色にしていくかを考えていました。

小島 行き着く先の「感情」は、二人の中で、シンクロ率がすごく高くて。島田の方でビジュアルを上げてきて、それが相応しいか私がジャッジしていく感じでした。

下邨 素晴らしいチームワークですね!

「自分を失わせる」ことにある、美しさ

島田 商業デザインの現場と違って、二人でやっている今はまるで、離れ小島に居るような感覚です。自分たちはデザイナーとしてこうだ! みたいな「デザイナー」の枠を決めずに、楽しいと思うことを好き勝手やっている感じです。

下邨 世間の方は、「私はデザイナーしています。」って申し上げると、ほぼ「ファッション・デザイナー」を思い浮かべられますよね。島田さんは離れ小島に移って、なにが違うとお感じになりましたか?

島田 仕事の関われる範囲が違いますよね。デザインチーム内の一スタッフとしてでは、制作しても、制作物を使う人の顔がみえない。僕は受け手の感情から逆算して作っていきたい性分なので、その人を知らないと、その人のイメージがつくれない。独立してからは、直接クライアントと一緒にお話できるような環境をつくれたことが良かったし、それを求めていました。自分のフィルターで相手の想いをいかに歪めずに伝えるかを意識しています。

小島 美術予備校時代からそうですが、「デッサン」の大切さをすごく感じていて。モチーフなり、人なり、対象を「観察」して、どう伝えるか。そこに、どういう「空気」「感情」があったかを伝えたいです。見たものをそのまま写し取るだけだと、それは対象の説明だけになってしまって。どうやって、その時の「雰囲気」まで伝えるかを大切にしています。

島田 同じものをみても、答えはひとつじゃないですよね。今日はそうでも明日は違う。その観察から僕らの場合は「自分を失わせる」ようにしていて。クライアントさんがどう感じているかを憑依させて、こういう表現がいいかも! と、提案しています。だから毎回テイストも決まっているわけでもなく、バラバラかもしれません。僕ららしいね、とはよく言われますけどね。

下邨 デザインって、制作物を納品しているようでいて、実は“発信者”と“受け手”の「人間同士の関係性」をつくっているのですよね。そこで、面白いなと思ったのは、テイストをクライアントにあわせつつも、お二人「らしい」仕事と言わせる兼ね合いはどこにあるのかなと。

島田 自分の美的感覚にそぐわないと思うものはつくらない、というのが僕たちらしさを貫いているのだと思います。

小島 そういうものを自然と選択しているのはあるかも知れませんね。私たちがなんでデザイナーをしているのかって、「美しい」と思うものがちゃんと日本にも残っていければ良いなと思っています。ビジュアル的な「美しい」ものだけではなく、感情や関係性も含めて「美しい」ものを大切にしています。

下邨 お二人はお仕事において、どの様に連携・役割分担されてらっしゃるのですか?

小島 島田と意気投合したきっかけになりますが、私は子供の頃から、ピエール・ボナール*の模写を続けていまして。浪人時代に島田とはじめて会ったとき「僕はエドゥアール・ヴュイヤール**が好きなんだよね。」と言われたのです。(*,** 共にポスト印象派とモダンアートの中間点に位置する「ナビ派」と呼ばれる画家。)この二人の画家は大親友でして。同じ審美眼を持つ島田とは、将来的にも同じビジョンを描けるなと。この人の目は間違いないなと思いました。学生時代に、グループワークの授業もすごく多くて。私はそれが苦手で。みんな美的感覚が違うのに、なぜ共同で制作しなければならないのだろう? と思って。でも島田とだけは、グループワークが出来ました。

ゆずらないこだわり

下邨 多様な価値観の現代、グループワークを通り越して、一緒に生きていかなければいけない世の中ですよね。その辺りのクライアントとのコミュニケーションを、お二人はどの様に関わっていけば良いとお考えですか?

島田 each toneのみなさんは、しっかり良いものをつくろうと思ってくださるから。それがよかったなと思いました。いろいろな意味で「ゆずらない部分」を持っているって、とても大切だと思います。

小島 クライアントさんにお願いされたときに、なるべくお話はお聞きするようにしています。けれども、「こだわり」がない方、「お任せするから、好きにやってよ」という依頼にはあまり応えない様にしています。例えばご予算の少ないクライアントさんとお仕事することもあっても、良いデザインのものをつくりたいんだよね! という方は嬉しいです。じゃあ、出世払いで! とか、物物交換で! とか。

下邨 「限られた“時間”」を共通の「こだわり」でご一緒できるのって、ステキですよね。すごく生きている実感がありますよね。

小島 デザイナーをしていて一番楽しいのは、様々な価値観の方、多種多様な職業の方、しかもそれぞれの「こだわり」を持った方とご一緒できること。すごく嬉しいです。

島田 そこでも、その方を「観察」して「こだわり」を探っていきます。だから、クライアントによりデザインを進めていく工程も時間もまちまちです。

下邨 お二人といつもお話ししていて思うのは、すごく「聞いてくださる」姿勢。だからこそ、こちらもしっかりお伝えしなきゃ、って毎回思います。すごく有意義な時間です。やはりアートの基本は「観察」がキーワードですね!

デザイナーという選択

下邨 お二人は、なぜデザイナーという職業を選ばれたのですか?

島田 今も目指してないかも(笑)。未だにデザイナーになろうと思ってない(笑)。社会的に、大人としてデザイナーを自称しているだけで、肩書きとか何者かを語りたいわけではないです。

小島 今やりたいことがたまたまデザインであって、絵も描くし、本も読むし。やりたいことをその時その時、ずっと保っているという状態かも知れません。とはいえ、私は将来の夢はずっとデザイナーでした。うちは両親も祖父も芸術家で。小さい頃から絵は好きでしたが、祖父の作品には勝てっこないなと子供ながらに意識して。彼は天才だなと。でも両親も祖父も、自身の作品のプロデュースはうまくなくて。観せることよりも作ることに熱中していたなと。それを私が代わりに伝えていきたいと。自分の周りのステキな人たちを紹介したい。それがデザイナーを志したきっかけかなと思います。

下邨 クライアントの依頼を細やかに「観察」し、その「ゆずらない」要望や「こだわり」を見いだし、そして、ご自身は「自分を失わせ」ながらも、反面、飽くなき「美しさ」の追求を怠らない。一見、矛盾する「意識」のような移ろい易いものを、お二人の関係性が上手に支え合って、だれも見たことのない世界を視覚化している。その背景には、クライアントの意志をより多くの人に伝えたいという気持ちがベースにある。そんなお二人が、víz PRiZMAのサイトビジュアルをしてくださったことが、すごいご縁だし、光栄です!

************プロフィール************

SHIMA ART&DESIGN STUDIO
小島沙織と島田耕希によるクリエイティブスタジオ。2016年に設立。ビジュアルコミュニケーションを中心に、絵・写真・言葉を用い、紙から空間まで媒体にとらわれない総合的なデザインワークを行う。また、個人としてもアートワークを行うほか、染織作家と共にテキスタイルプロダクトブランド「WARP WOOF 139°35°」を設立するなど、多角的な活動と表現を通し、創造と生活の美の術を探求する。

小島沙織|COJIMA Saori
Designer
1987年千葉県生まれ。2013年に東京藝術大学デザイン科修士課程を修了後、同大学デザイン科で3年間教育研究助手として勤務。2016年にSHIMA ART&DESIGN STUDIOを設立。

島田耕希|SHIMADA Koki
Designer
1986年埼玉県生まれ。2012年に東京藝術大学デザイン科を卒業。同年、イメージコンベイサービスに入社。2017年に退職し、SHIMA ART&DESIGN STUDIOに参画。

下邨尚也|SHIMOMURA Naoya
Chief Designing Artist
1975年東京都生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。印刷会社、デザイン事務所、フリーランスを経て、東京藝大DOORプロジェクト受講後、2021年にeach tone合同会社の設立メンバーに。

each tone合同会社
東京藝術大学DOORプロジェクト発スタートアップ。2021年設立。「アート思考」「デザイン思考」といった藝術的な発想で世界をとらえ、「アートプロジェクト」で社会課題を解いていく会社。目下、1stアートプロジェクトである、会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)をローンチし、オンラインサービス説明会など、精力的に活動中。

************連絡先************

【SHIMA ART&DESIGN STUDIO】https://shimaads.com
【each tone】http://18.176.141.142
【víz PRiZMA】https://viz-prizma.com
【mail】contact@viz-prizma.com

【特別インタビュー 2】「víz PRiZMA」 ― そして、いのちは光になる “生きる”を支え、瞳の記憶を未来へつなぐ、バーチャル墓地

東京藝術大学DOORプロジェクト発スタートアップ each tone社が、今年5月に発表した、会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)。「そして、いのちは光になる」のキャッチコピーがついたこのサービスは、アーティストが創る、新しい“偲び”のかたちです。

「víz PRiZMA」のサービスご紹介と併せ、その魅力について、創業者3名が語ります。

メンバー写真
写真:(左から)船木理恵(Chief Planning Artist)/下邨尚也(Chief Designing Artist)/柿田京子(Chief Managing Artist)

21世紀のお墓と供養を考える ― 「バーチャル墓地」への期待

柿田 いま、お墓は社会問題です。少子高齢化が進み、墓じまいが増加。首都圏や海外に住み、地元に戻る予定のない地方出身者。先祖代々の墓を長男が守るというしきたりの継承は、難しくなっています。法事なども、集うべき方々が高齢で集まれない。日常のお墓管理も、負担になっているケースが多いのではないでしょうか?この傾向は、近隣アジア諸国でも同様です。日本以上に少子高齢化が著しい中国では、すでに墓所が不足。庶民がお墓をもつハードルが上がっていると聞きます。

下邨 このような状況を受け、伝統を大切にしながら、21世紀に供養と偲びの文化をどのように受け継いでいけばよいのか、アーティストとして自分たちにできることを真剣に考え、かたちにしたのが「víz PRiZMA」です。
もとよりアートは、答えのない課題に寄り添うのが得意です。生きること、死ぬこと、あの世といったテーマは、古来より多くの藝術作品に登場します。大切な人を想う切なさ、やるせなさ。自分の力ではどうすることもできない不条理。藝術は、そのような「人」の想いに、ひっそりと寄り添い、優しく、柔らかく、生きていくことを支えます。

船木 墓地をバーチャル空間(インターネット上)に建立することで、アクセスや管理の課題が解消できます。大切な人は、いつも身近に感じていたいですから、時間や場所を気にせず、スマートフォンから会いに行く。既存の墓地や仏壇の代わりにもなりますし、併用しても良い。これまで「家」の要素が大きかった弔いのかたちが、少し「個」に寄り、「自身の心の拠り所としての偲び」が、一層クローズアップされてくる。víz PRiZMAの登場とともに、新たな文化が芽生えるのではと、楽しみです。

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「víz PRiZMA」 サービス紹介

「víz PRiZMA」は、伝統的な偲びの文化を継承しながら、藝術性を採り入れ、バーチャルならではの利便性と経済性を兼ね備えたバーチャル墓地です。

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víz PRiZMAサービス全体像

1.説明会 ― まずは、説明会へ サービスをご理解いただくため、全員とお話しします

説明会を開催し、ご関心をお持ちの方々全員とお話ししています。サービス内容や世界観をご理解いただき、魅力を感じてくださる方々をお迎えしたいためです。毎回、アットホームな雰囲気で、和やかな会話がはずんでいます。現在は、コロナに配慮してZoomで行っていますが、いずれはリアルの場も併用したいと思っています。多くの方のご参加をお待ちしています。

2.入会 ― 個別にご案内する専用リンクから手続きへ

説明会の後、入会をご希望の方には専用リンクをお渡しします。こちらから、お手続きをいただきます。
víz PRiZMAは、宗教とは一切関係ありません。ご信教にかかわらず、どなたでもご入会できます。

3.藝術ワークショップ ― 終わりを意識し、生きる時間に光をあてる、人生を変える1日

入会後、最初に「藝術ワークショップ」に参加いただきます。リアルな場に集まり、1日かけて行われるこのワークショップの目的は、終わりを見据えることで、生きている大切さを実感すること。まさに、人生を変えるターニングポイントです。
1日かけて、“より良く生きる”誓いを胸に、アーティストと共に作品を創ります。虹彩や声紋(声)といった、生体データの取得も行います。どなたでも、手軽にお楽しみいただける内容を厳選していますので、制作経験のない方も歓迎です。ここで創る作品は、人生を“より良く生きる”誓いの象徴、そしてやがて、誓いを胸に“より良く生きた”証として、デジタルアートとなって、バーチャル墓地に展示されます。

4.コミュニティ ― “より良く生きる”ための場・仲間・きっかけ

会員は、「コミュニティ」で終身お楽しみいただけます。「コミュニティ」は、会員の「より良く生きる」を支える伴走者。豊かな人生をお過ごしいただくための良質な場、仲間、きっかけを、ご提供していきます。
víz PRiZMAの出身母体である、東京藝術大学DOORプロジェクトをはじめとする、アーティストのネットワークを活用しながら、美術、音楽、書道、身体表現、文学など多彩なジャンルのアートを、展覧会や演奏会、セミナーや講演会、ワークショップ、サークル活動、勉強会といった、さまざまな切り口でご案内したいと考えています。活動を立ち上げたい会員の方を支援する仕組みも考案中です。
コミュニティは、現在準備中。2022年はじめにお披露目の予定です。

5.バーチャル墓地 ― 虹彩アートを展示し、記憶をタイムカプセルで未来へ

バーチャル墓地には、「ギャラリー」と「タイムカプセル」、ふたつの空間を用意しました。「ギャラリー」は、作品を展示する場所。藝術ワークショップで創った作品と虹彩データによるデジタルアートを展示します。「タイムカプセル」は、データを格納できる場所で、後世に届けたい選りすぐりのデータを入れることができます。いずれも、他界後はブロックチェーンに記録し、改ざん防止はもちろんのこと、その方が生きた証としての真正性を証明します。
残された方々は、スマートフォンやPCから、時と場所を選ばず、大切な方のまなざしと記憶を感じることができます。

6.プラットフォーム ― 時を経てつながったリンクが、いのちの流れを記録する樹形図に

会員同士のバーチャル墓地をつなげ(リンクをはり)、関係性を記録することができます。関係性には「パートナー」と「親子」の2種類があり、双方の合意をもってつなぐことが可能です。100年後、200年後、もっと先まで、生きた証が残され続けたとき、遠い未来の子孫らは、まるで大木の根元から枝葉を見上げるような形で、自身のルーツ、自らに流れ込むいのちの源流を感じることができるでしょう。
数々の技術革新を経ていくと想定されますが、私たちは、その時々の最先端のテクノロジーを駆使しながら、オリジナルデータを未来へつなぎ続けていく所存です。
その頃、一体どのような時代になっているのか。輝かしい未来であることを祈りつつ。
プラットフォームは、2022年にサービス開始予定です。

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瞳でつくる世界観—遺骨でなく、「虹彩アート」をお墓に

下邨 「víz PRiZMA」では、瞳(虹彩データ)をデジタルアートにして、バーチャル空間に展示します。
日本の法律では、墓は「遺骨を地中に埋葬したもの」。骨への想い入れは、仏舎利に由来するところだと思いますが、私たちはこの部分に、オリジナリティを発揮しました。“その人”を象徴するものとして、骨ではなく、瞳(虹彩)に着目したのです。虹彩は、黒目のまわりのドーナツ状の部分。ここの模様は、生体認証にも使われる、その人の独自性を示す大切な情報ですから。

柿田 そのインスピレーションは、突然降りてきました。瞳だ、虹彩だ、と。大切な人にもう会えない状況下で、その人の何を覚えていたいか、何を感じていたいか。やはり、“まなざし”ではないか、と。

船木 瞳(虹彩)には、宇宙に通じる深淵さがあります。のぞき込むと小宇宙のようですよね。人は、瞳を通じて世界をとらえ、また、瞳から内なる世界を外界に発信します。これは、視力の有無の話ではなく、「心の瞳」とも言われるように、目を閉じたところから始まる世界、目を閉じなければ見えない世界もあるのです。目を開けている・視力があるから見えるとは限らない。目を閉じている・視力がないから見えないとは限らない。「見ること」「観ること」。果てしなく深い世界だと思います。

柿田 虹彩のことを、英語ではiris(アイリス)といいます。これは、奇しくも、ギリシア神話では、虹を司る女神の名前。虹は、この世とあの世を結ぶ懸け橋で、アイリスは両方の世界を橋渡しする神なのです。虹彩をめぐる世界観が、古代より、この世とあの世であったこと、感慨深いです。

想いをこめた作品がまとう「ちから」

柿田 想いや願いをこめたモノは、その人にとって「ちから」となり、「拠りどころ」となります。
病気が早く良くなるように「千羽鶴」を折ったりします。「甲子園の土」は、球児たちにとって、努力と汗と活躍の象徴なのでしょう。戦時中は、出征する兵士の無事の帰還を願って「千人針」を渡していました。何気ないモノが、想いを込めたことによって、その人にとってかけがえのないものとなり、人生の苦境を支えたり、大きな挑戦の後押しをしたりします。

船木 “より良い人生”を思い描いて創るとき、まだ言葉にすらならない想いを、色や線が拾ってくれることがあります。絵の具の色合いや、線の流れを「イイ」と感じるとき、そこには必ず、自身の意識にすらあがらない価値観や想いを反映した何かがある。だからこそ、良いと思うのです。作品が「完成した」と思える瞬間も、同じです。自身を表現できたと感性が認めたところで、完成する。

下邨 「藝術ワークショップ」で制作した作品には、言葉では語り切れない、これから歩む素晴らしき人生への想いが込められています。できが良いとか悪いとか、そういう問題ではなく、“より良く生きる”を誓った自身の証なのです。バーチャル墓地のギャラリーに展示されるデジタルアートは、その人の想いや願いの結晶であり、それを携えて生き抜いた、充実した人生の象徴となるはずです。

「víz PRiZMA」—そしていのちは“光”になる 語源

「víz」は水、「PRiZMA」はプリズム、いずれもハンガリー語です。みずみずしい感性をもちながら、七色に輝く光をもって、社会の課題のかたわらにあり続けたい。もっと多くの、さらにたくさんの方々に出会い、プリズムの光をお届けするために、私たちはひとつひとつサービスを創っていきたいと思います。

【each tone】 http://18.176.141.142
【víz PRiZMA】 https://viz-prizma.com
【mail】 contact@viz-prizma.com

想いをこめることの意味

お久しぶりです。高橋です。
each toneに勤務し始めて3ヶ月経ちました。

each toneはアーティストと創る新しい偲びの形として、「víz PRiZMA」という会員制のブランドを立ち上げました。
「víz PRiZMA」の入会者は、最初に藝術ワークショップにご参加いただき、1日かけて想いを込めた作品をつくります。
ワークショップの目的は、限りある生に目を向け、生きている大切さを実感し、今後の人生をより良く生きることにあります。

作品に想いを込めるとは、何を指しているのでしょうか。想いをこめた作品を作ったとして、その先に何があるのでしょうか。
わたしの考えを述べてみようと思います。

まず、想いをこめるというのは、誰かのために行動したとき際立って実感されるものではないでしょうか。
例えば、プレゼントを贈るとき、相手が欲しいものは何か考えます。あるアイテムがピンときたら、それはどんなタイミングで使ってもらえるだろうとか、相手が好む色は、と思案を巡らせます。
もしかしたらもう持っているかも、要らないものだったらどうしよう、でもアタリなら喜んでくれるんじゃないかという期待と不安のせめぎあいを「これだ!」と感じた時の自分自身のひらめきを頼りに他の候補を捨て、決断します。
想いのこもったプレゼントとは納得いくまで様々に悩みぬいて決めたものの事だと思います。

作品作りもそれに似ています。
画面の右上にもっと深い色の絵の具が欲しい、もっと強くエネルギッシュに見せたいときはどうしたらいいだろう。何度も絵の具の混ぜ具合や置き方を試します。
思わぬところにはみ出てしまった! そんなときは他を加筆してなんとか良いハーモニーにならないかを探ります。
やりすぎて失敗した時は、最初からやり直すのも大切です。
作品の要素のひとつひとつに、その時何を考えていたかという記憶が伴います。
どうせこんなものだろうという気持ちをぐっとこらえて試行錯誤を重ねて、自分だけがわかる「ここで完成した、もう十分。」という所まで持っていけた時に、想いはこめられたと言えるのではないでしょうか。
このような体験は、自分は何が好きでどのような傾向があって、どういうイマジネーションを持っているのかを確かめることできます。

想いをこめた作品を作り、人生をより良く生きるにはどうすればよいかと考える。とても大きなテーマです。
しかし、私たちは毎日、様々なことに悩んだ上で、複数ある選択肢の中から、ひとつを選ぶことを繰り返しています。例えば、コーヒーはアイスにするかホットにするか。ボッーっとテレビを見ている時に、どのチャンネルを見るか。
ただ、そのことを考える暇もないほど忙しいのです。
だからこそ人生という時間のなかの、ある一日を作品と共に記憶にとどめておいて、その日を結節点にして人生をより良くしたいと念じる。
そして、自分を知ることによって自分らしい活力ある生き方を希望できる。
作品に想いをこめることの意味はそこにあるのではないでしょうか。

藝術という選択 ― Heart of “each tone”

人がある状況にでくわした時、藝術という選択があることで、普段できないこと、考えなかったことが可能になるのではないか。その積み重ねが社会を変革していくのではないか。

先週のエッセイを、弊社の髙橋若余は、こう締めくくりました。
これを受けて本日は、柿田京子が、改めてこのテーマの一例を語ってみたいと思います。

「人がある状況にでくわした時」-それは往々にして、都合が悪い状況であったり、危機的な状況であったりします。

その状況にどっぷり浸って、不幸な世界観を堪能し尽くすのも、ひとつの選択でしょう。悲劇をつぶさに観察しながら主人公を演じる自身が、「もっと悲劇性を高めるにはどう表現すればよいか」などと考えはじめたら、チャンス! あなた自身が気づくでしょう。自分がもう不幸な人ではなく、悲劇を題材に人生の深みを謳歌できる前向きな人間に変わっていることを。

お笑いや喜劇では、主人公の思い通りにならないアクシデントや、常識どおり進まないもどかしい事象を「笑いのネタ」としていることが多いですね。都合の悪い状況に対して、日和ったり、怒ったりする自身の様子を、人間ドラマとしてとらえる。客観視しながら、共感したり、別の人だったらどうするかと想像したり、あるいは関西弁で状況再現したらどうなるだろうと考えたりし始めたら、チャンス! あなたはもう、悩める現状をネタに、笑いと幸せを送り出す愉快な人に変わっています。

このように考えると、危機的だった状況が人生を謳歌する糧であり、都合が悪い状況が幸せな笑いを誘うきっかけであったりするわけで、もうどこからが不幸で、どこからが幸せだかよくわからない二律背反。不幸なのか幸福なのか、まさに「塞翁が馬」。相対するはずの感情が混在・混線してつながる中、最後には「生きていることは本当に素晴らしい」「みなさんありがとうございます」という愛おしい感謝につながっていく、不思議な世界が拓けてきます。

藝術という選択があること。それは、売れる作品をつくることや、高名なアーティストとして認知されるというような意味ではなく、やわらかい思考とやさしい眼差しをもって、人が自身の無意識から、本来持っている様々な発想や能力を引き出し、苦しみや違和感を和らげたり、改めて明日に向き合うエネルギーを生み出したりする活動です。

思えば、20世紀には、「損か得か」「善か悪か」といった、固定的なベクトルで課題に向き合うことが多かったように思います。この結果、取り残されてしまった課題—環境問題や、人の尊厳の問題など—が、今、SDGs*として並んでいます。21世紀という時代が、二律背反を交えた複雑な課題に寄り添う時代となっていることが見えるでしょう。

私たちは、どのようにして、ここから未来を創っていくのでしょうか?

これから社会で活躍する若きアーティストの方々の将来が希望に満ちたものであることを願い、今に悩むすべての方々が、その状況の中から、明日に向き合うきっかけを見出していけることを切に願いながら、本日の筆をおきたいと思います。
私たちeach toneが、どうかその一助になれますように。

*SDGs:2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。(外務省ホームページより