「価値」の“魅せ方”

小学生の社会科で、「財とサービス」という言葉を習いました。人の欲望を充足させるものとして、おおまかに分けるとそれぞれ、有形と無形の価値を持つものとされています。よくよく調べてみると、さらに細分化されます。私は双方の要素を兼ね備えたものもあるなと思うのです。

例えば、絵画作品を所有している場合はどうでしょう。「財」としての有形の美術品の所有権はもちろん、他方で絵を飾ることで、室内が華やかになるとか、雰囲気が変わるとか、無形である「体験」のような「サービス」的要素も感じるのです。そして、この価値は受け手によっても意味を変えます。

バンジージャンプというアトラクションがありますよね。景観の良い橋の上などから谷間の渓流に向かってジャンプするとしたら、ある人はそれに対価を支払い、その「体験」を得ます。
しかし、またある人はそれを罰ゲームだと捉え、こんな危険な行為はあり得ない、と敬遠することもあります。

見せ方・魅せ方を変えることにより、価値観を変えられる場合もありますよね。

スティーブ・ジョブズは携帯音楽プレーヤーであるiPodを売り出すときに、そのデータ容量性能の表記を「ギガバイト」ではなく「1000曲」という、ユーザーに解りやすい単位で魅せました。

ディッシュウォッシャー(食洗機)を売り出すとき、「家事が楽になりますよ」では購入者が怠惰なイメージをこうむってしまうおそれがあるので、「手が荒れませんよ」として売り出しています。

良い商品やサービスが開発できたとき、それをどう魅せるか、どうお伝えするか次第で、その「価値」が大きく変わることを強く実感する毎日です。

仮にインターネットが当時存在したとして、馬車の時代に、T型フォードを、もしwebライティングやランディングページの手法を使ってで売り出したとしたら、どんな魅せ方をするのかな、なんて考えております。

each toneの1stプロジェクト「víz PRiZMA」。
まさにそんな、全く新しい価値のご提供になると思います。
とても奥深い多様な要素を持つ本サービス。どの様にお伝えすべきなのか。
今回も下邨尚也が、想いを綴らせて頂きました。

引き続き、「víz PRiZMA」にどうぞ、ご期待ください。
https://www.viz-prizma.com

「想いを込める」ということ

暑い日が続きますね。皆さま、お変わりございませんでしょうか?
今週の投稿は、ワクチン接種2回目を終え、39℃近い副反応による発熱をかかりつけ医に報告しましたら「若い証拠!」とお墨付きを頂いた、下邨尚也がお送り致します。

each toneの1stプロジェクト「víz PRiZMA」の説明会を月に数回の頻度で行っております。「víz PRiZMA」では、会員様が他界後、ご遺骨の代わりに、ご自身がつくられたアート作品と瞳(虹彩)由来の生体アートを掛け合わせた作品を、ブロックチェーンを掛けて後世に伝えるサービスを一端としております。
この、ご自身でつくっていただいたアート作品に「想いを込める」作業をしていくわけですが、この部分、なかなか解りづらいかも知れませんね。少し例示しながら、説明させてください。

ふたつの石ころ
下邨があるギャラリーを覗いていたときのことです。作家さんのお名前は残念ながら失念しました。作品には、「ふたつの石ころ」が飾ってありました。文字通り、石ころです。この作品は、なにを表現しているのでしょうか?
ギャラリーのオーナーにお話をお聞きしたところ、この「ふたつの石ころ」はそれぞれ、北極と南極から拾ってきた石ころなんだそうです。それが、今、物理的な距離を越えて、このひとつの作品の画面上に同時に存在している。みなさんはどうお感じになりますでしょうか?

著名人のサイン
これもよくありますよね。「握手してください」とか「サインいただけますか?」とか。渋谷なんかで見かける落書きにはなんの価値も感じず、むしろ迷惑行為なのに。とある人が書いたものには、とても価値を感じる。
もっというと、ご自身のお子様が生まれて初めて自分で書いたお名前の文字には、感無量ですよね。こんな経験、思い起こしてみると、どなたにもあるのでは無いかと思います。

認め印
脱ハンコの議論も偶にニュースになっておりますが。あの朱の印影も、あれがあることにより「承認」や「自筆」の証明になるわけです。ご本人がその場にはおらずとも。考えてみると、不思議にお感じになりませんか? PCや高解像度のカメラがありますから、この現代において、その印影の複製を取ることは非常に容易です。で、それら複製を禁じたり、その真偽を証明するお役所書類があったりもします。
日本画家や書家が作品に押す「落款」がアートの世界でもあります。その意匠(デザイン)も含めて、ステキな文化だなと思う場面でもあります。

さて、3つの例を挙げてみました。
「想いを込める」という観点からまとめさせていただくと、これらの事例には、「発信者」と「受け手」が存在します。そこで「発信者」の意図が、好意的な「受け手」に受け止められると、非常に意味や意義が生まれ、また、価値を見いだせない「受け手」にとっては、それらは何でも無いわけです。
1つ目の例では、ある人はこれは「地球」だ! と感じ、またある人はただの石ころと感じ。2つ目の例では「肉筆文字」と「落書き」。3つ目の例では「意思表示」と「朱い汚れ」。

アート作品にも同じことが言えると思います。興味がないひとには、現代アートはただのガラクタですし、印象派の絵画もキャンバスの上に顔料が乗っただけのモノです。しかしそこ介在する「発信者」と「受け手」の関係性や時代、価値観や嗜好などが重なったときに、「込められた想い」が「伝わる」わけです。とても奇跡的な出来事だと感じるのは私だけでしょうか?

みなさまも、こんな体験をされてみませんか?
each toneの1stプロジェクト「víz PRiZMA」では、無料説明会を定期的に行っております。是非お気軽にご参加ください。

https://www.viz-prizma.com/briefing

【特別インタビュー 3】だれも見たことのない世界をデザインする 瞳の記憶を未来へ 「víz PRiZMA」ブランドづくりへの挑戦

会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)。今夏始動するこのサービスは、インターネット上で、「この世」と「あの世」をつなぐ。さらに、生前から他界、その後の遠い未来まで、このサービスが紡ぐ時は、人の一生よりはるかに永い。まだだれも目にしたことのない場所、時代を、どのようにデザインするのか? どのように表現するのか?

「víz PRiZMA」のブランドサイトのデザインをしたSHIMA ART&DESIGN STUDIOの小島沙織さんと島田耕希さん。そしてeach tone社 Chief Designing Artistの下邨尚也が、「víz PRiZMA」ブランドづくりへの挑戦を語ります。

小島・島田・下邨 写真
(左から)小島沙織さん、島田耕希さん、下邨尚也。
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víz PRiZMAという世界観の構築

下邨 「víz PRiZMA」は、「瞳」(虹彩)から拡がる世界観でできています。ひとは瞳で世界をとらえ、自身の内なる世界を、瞳を介して世界へ発します。時として、目は言葉よりも雄弁です。瞳は、視力の有無にかかわらず、本質的な世界をとらえます。瞳(虹彩)は黒目のまわりのドーナツ型の部分ですが、その文様は、その人の独自性、唯一無二の存在であることを象徴する部分です。虹彩の模様は、成長過程で、まばたきなどでつくられるシワですので、DNA由来ではありません。よって、DNAが同じ一卵性双生児であっても、虹彩の模様は異なり、虹彩データは認証に使われたりするのです。虹彩のことを英語でiris(アイリス)と言います。アイリスは、ギリシア神話に登場する「虹」の女神の名前。虹は、この世と天界を結ぶ懸け橋で、アイリスは、ここを司っているのです。瞳(虹彩)は、まさに、この世とあの世をつないでいるといえるでしょう。

ブランドロゴタイプは、優美でありながら、力強さを強く意識しました。元となる欧文フォントは、「Optima」という特徴のあるサンセリフ体をベースにしています。「víz PRiZMA」というブランドネーミングが決まった瞬間に、このフォントが相応しいなと感じました。
ブランドカラーについては、上品に、けれども意志を強く、思い切ってモノトーンとして、少しだけ黒の濃度を落としております。彩度を持たせなかったという点で、皆さまの創造の余地を残し、且つ、どの様にも変容しないという二律背反した意味を含ませました。これは“偲び”や“祈り”という行為を強く意識したものです。創造とそれらの行為は、一見、類似性が高いように見えますが、思考のベクトルが、創造では外側に、“偲び”や“祈り”では内側に向いており、相反するものなのです。後者は非常に独自性が高く、ある対象に対して、個々がそれぞれ抱く強い感情であるからです。同じ理由から、「víz PRiZMA」はロゴタイプのみとし、ロゴマークは持たないデザインとしました。

このような、未知な世界観にあふれたサービス。お二人は、このお話をした時に、開口一番「興味深い」と仰ってくださいました。どの辺りを興味深いと思ってくださったのでしょう?

小島 「祈り」という行為にすごく興味がありました。私は普段から、西洋美術史を語る上で切り離せない「キリスト教」の勉強をしていて。信仰心が薄いとされる日本人が、どうやって「祈り」という場を持つのか。どうやって「死」に立ち向かっていくのか。そういったことに向き合っていくブランドのこれからに興味を持ちました。

下邨 音楽の発生もキリスト教の存在は外せないですよね。グレゴリオ聖歌とかもそう。

島田 僕は、みえるもの・みえないものにすごく思い入れがあって。みえないけれども感受出来る世界をブランドの視点を通して表現してみたいなと思いました。詩人・吉野弘さんの「眼・空・恋」という詩が好きで。「水晶体」をモチーフにしている詩なのですが、打ち合わせでお話しを伺ったときに思い浮かべました。あとは、虹彩を個人識別に使っているところにも興味をもちましたし、既存のお寺や墓地を否定するわけではなく、多様な選択肢のひとつとしてサービスがあることに共感しました。

下邨 ブランドサイトのビジュアルを生み出すことのご苦労や工夫ってありましたか?

島田 “偲び”や“祈り”という繊細なテーマに触れることの難しさを感じました。併せて、ブランドサイトとしての訴求性も兼ね備えないといけないなかで、2回目の打ち合わせで、下邨さんの「意志を伝えていくというよりは、ただ、そこにあることがいいのです。」という言葉を一番心に留めました。víz PRiZMAのロゴやサービス概念から、「水」「光」というイメージは早い段階からイメージしていまして、着地の「感情」から、どういった表現、形、色にしていくかを考えていました。

小島 行き着く先の「感情」は、二人の中で、シンクロ率がすごく高くて。島田の方でビジュアルを上げてきて、それが相応しいか私がジャッジしていく感じでした。

下邨 素晴らしいチームワークですね!

「自分を失わせる」ことにある、美しさ

島田 商業デザインの現場と違って、二人でやっている今はまるで、離れ小島に居るような感覚です。自分たちはデザイナーとしてこうだ! みたいな「デザイナー」の枠を決めずに、楽しいと思うことを好き勝手やっている感じです。

下邨 世間の方は、「私はデザイナーしています。」って申し上げると、ほぼ「ファッション・デザイナー」を思い浮かべられますよね。島田さんは離れ小島に移って、なにが違うとお感じになりましたか?

島田 仕事の関われる範囲が違いますよね。デザインチーム内の一スタッフとしてでは、制作しても、制作物を使う人の顔がみえない。僕は受け手の感情から逆算して作っていきたい性分なので、その人を知らないと、その人のイメージがつくれない。独立してからは、直接クライアントと一緒にお話できるような環境をつくれたことが良かったし、それを求めていました。自分のフィルターで相手の想いをいかに歪めずに伝えるかを意識しています。

小島 美術予備校時代からそうですが、「デッサン」の大切さをすごく感じていて。モチーフなり、人なり、対象を「観察」して、どう伝えるか。そこに、どういう「空気」「感情」があったかを伝えたいです。見たものをそのまま写し取るだけだと、それは対象の説明だけになってしまって。どうやって、その時の「雰囲気」まで伝えるかを大切にしています。

島田 同じものをみても、答えはひとつじゃないですよね。今日はそうでも明日は違う。その観察から僕らの場合は「自分を失わせる」ようにしていて。クライアントさんがどう感じているかを憑依させて、こういう表現がいいかも! と、提案しています。だから毎回テイストも決まっているわけでもなく、バラバラかもしれません。僕ららしいね、とはよく言われますけどね。

下邨 デザインって、制作物を納品しているようでいて、実は“発信者”と“受け手”の「人間同士の関係性」をつくっているのですよね。そこで、面白いなと思ったのは、テイストをクライアントにあわせつつも、お二人「らしい」仕事と言わせる兼ね合いはどこにあるのかなと。

島田 自分の美的感覚にそぐわないと思うものはつくらない、というのが僕たちらしさを貫いているのだと思います。

小島 そういうものを自然と選択しているのはあるかも知れませんね。私たちがなんでデザイナーをしているのかって、「美しい」と思うものがちゃんと日本にも残っていければ良いなと思っています。ビジュアル的な「美しい」ものだけではなく、感情や関係性も含めて「美しい」ものを大切にしています。

下邨 お二人はお仕事において、どの様に連携・役割分担されてらっしゃるのですか?

小島 島田と意気投合したきっかけになりますが、私は子供の頃から、ピエール・ボナール*の模写を続けていまして。浪人時代に島田とはじめて会ったとき「僕はエドゥアール・ヴュイヤール**が好きなんだよね。」と言われたのです。(*,** 共にポスト印象派とモダンアートの中間点に位置する「ナビ派」と呼ばれる画家。)この二人の画家は大親友でして。同じ審美眼を持つ島田とは、将来的にも同じビジョンを描けるなと。この人の目は間違いないなと思いました。学生時代に、グループワークの授業もすごく多くて。私はそれが苦手で。みんな美的感覚が違うのに、なぜ共同で制作しなければならないのだろう? と思って。でも島田とだけは、グループワークが出来ました。

ゆずらないこだわり

下邨 多様な価値観の現代、グループワークを通り越して、一緒に生きていかなければいけない世の中ですよね。その辺りのクライアントとのコミュニケーションを、お二人はどの様に関わっていけば良いとお考えですか?

島田 each toneのみなさんは、しっかり良いものをつくろうと思ってくださるから。それがよかったなと思いました。いろいろな意味で「ゆずらない部分」を持っているって、とても大切だと思います。

小島 クライアントさんにお願いされたときに、なるべくお話はお聞きするようにしています。けれども、「こだわり」がない方、「お任せするから、好きにやってよ」という依頼にはあまり応えない様にしています。例えばご予算の少ないクライアントさんとお仕事することもあっても、良いデザインのものをつくりたいんだよね! という方は嬉しいです。じゃあ、出世払いで! とか、物物交換で! とか。

下邨 「限られた“時間”」を共通の「こだわり」でご一緒できるのって、ステキですよね。すごく生きている実感がありますよね。

小島 デザイナーをしていて一番楽しいのは、様々な価値観の方、多種多様な職業の方、しかもそれぞれの「こだわり」を持った方とご一緒できること。すごく嬉しいです。

島田 そこでも、その方を「観察」して「こだわり」を探っていきます。だから、クライアントによりデザインを進めていく工程も時間もまちまちです。

下邨 お二人といつもお話ししていて思うのは、すごく「聞いてくださる」姿勢。だからこそ、こちらもしっかりお伝えしなきゃ、って毎回思います。すごく有意義な時間です。やはりアートの基本は「観察」がキーワードですね!

デザイナーという選択

下邨 お二人は、なぜデザイナーという職業を選ばれたのですか?

島田 今も目指してないかも(笑)。未だにデザイナーになろうと思ってない(笑)。社会的に、大人としてデザイナーを自称しているだけで、肩書きとか何者かを語りたいわけではないです。

小島 今やりたいことがたまたまデザインであって、絵も描くし、本も読むし。やりたいことをその時その時、ずっと保っているという状態かも知れません。とはいえ、私は将来の夢はずっとデザイナーでした。うちは両親も祖父も芸術家で。小さい頃から絵は好きでしたが、祖父の作品には勝てっこないなと子供ながらに意識して。彼は天才だなと。でも両親も祖父も、自身の作品のプロデュースはうまくなくて。観せることよりも作ることに熱中していたなと。それを私が代わりに伝えていきたいと。自分の周りのステキな人たちを紹介したい。それがデザイナーを志したきっかけかなと思います。

下邨 クライアントの依頼を細やかに「観察」し、その「ゆずらない」要望や「こだわり」を見いだし、そして、ご自身は「自分を失わせ」ながらも、反面、飽くなき「美しさ」の追求を怠らない。一見、矛盾する「意識」のような移ろい易いものを、お二人の関係性が上手に支え合って、だれも見たことのない世界を視覚化している。その背景には、クライアントの意志をより多くの人に伝えたいという気持ちがベースにある。そんなお二人が、víz PRiZMAのサイトビジュアルをしてくださったことが、すごいご縁だし、光栄です!

************プロフィール************

SHIMA ART&DESIGN STUDIO
小島沙織と島田耕希によるクリエイティブスタジオ。2016年に設立。ビジュアルコミュニケーションを中心に、絵・写真・言葉を用い、紙から空間まで媒体にとらわれない総合的なデザインワークを行う。また、個人としてもアートワークを行うほか、染織作家と共にテキスタイルプロダクトブランド「WARP WOOF 139°35°」を設立するなど、多角的な活動と表現を通し、創造と生活の美の術を探求する。

小島沙織|COJIMA Saori
Designer
1987年千葉県生まれ。2013年に東京藝術大学デザイン科修士課程を修了後、同大学デザイン科で3年間教育研究助手として勤務。2016年にSHIMA ART&DESIGN STUDIOを設立。

島田耕希|SHIMADA Koki
Designer
1986年埼玉県生まれ。2012年に東京藝術大学デザイン科を卒業。同年、イメージコンベイサービスに入社。2017年に退職し、SHIMA ART&DESIGN STUDIOに参画。

下邨尚也|SHIMOMURA Naoya
Chief Designing Artist
1975年東京都生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。印刷会社、デザイン事務所、フリーランスを経て、東京藝大DOORプロジェクト受講後、2021年にeach tone合同会社の設立メンバーに。

each tone合同会社
東京藝術大学DOORプロジェクト発スタートアップ。2021年設立。「アート思考」「デザイン思考」といった藝術的な発想で世界をとらえ、「アートプロジェクト」で社会課題を解いていく会社。目下、1stアートプロジェクトである、会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)をローンチし、オンラインサービス説明会など、精力的に活動中。

************連絡先************

【SHIMA ART&DESIGN STUDIO】https://shimaads.com
【each tone】http://18.176.141.142
【víz PRiZMA】https://viz-prizma.com
【mail】contact@viz-prizma.com

【特別インタビュー 2】「víz PRiZMA」 ― そして、いのちは光になる “生きる”を支え、瞳の記憶を未来へつなぐ、バーチャル墓地

東京藝術大学DOORプロジェクト発スタートアップ each tone社が、今年5月に発表した、会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)。「そして、いのちは光になる」のキャッチコピーがついたこのサービスは、アーティストが創る、新しい“偲び”のかたちです。

「víz PRiZMA」のサービスご紹介と併せ、その魅力について、創業者3名が語ります。

メンバー写真
写真:(左から)船木理恵(Chief Planning Artist)/下邨尚也(Chief Designing Artist)/柿田京子(Chief Managing Artist)

21世紀のお墓と供養を考える ― 「バーチャル墓地」への期待

柿田 いま、お墓は社会問題です。少子高齢化が進み、墓じまいが増加。首都圏や海外に住み、地元に戻る予定のない地方出身者。先祖代々の墓を長男が守るというしきたりの継承は、難しくなっています。法事なども、集うべき方々が高齢で集まれない。日常のお墓管理も、負担になっているケースが多いのではないでしょうか?この傾向は、近隣アジア諸国でも同様です。日本以上に少子高齢化が著しい中国では、すでに墓所が不足。庶民がお墓をもつハードルが上がっていると聞きます。

下邨 このような状況を受け、伝統を大切にしながら、21世紀に供養と偲びの文化をどのように受け継いでいけばよいのか、アーティストとして自分たちにできることを真剣に考え、かたちにしたのが「víz PRiZMA」です。
もとよりアートは、答えのない課題に寄り添うのが得意です。生きること、死ぬこと、あの世といったテーマは、古来より多くの藝術作品に登場します。大切な人を想う切なさ、やるせなさ。自分の力ではどうすることもできない不条理。藝術は、そのような「人」の想いに、ひっそりと寄り添い、優しく、柔らかく、生きていくことを支えます。

船木 墓地をバーチャル空間(インターネット上)に建立することで、アクセスや管理の課題が解消できます。大切な人は、いつも身近に感じていたいですから、時間や場所を気にせず、スマートフォンから会いに行く。既存の墓地や仏壇の代わりにもなりますし、併用しても良い。これまで「家」の要素が大きかった弔いのかたちが、少し「個」に寄り、「自身の心の拠り所としての偲び」が、一層クローズアップされてくる。víz PRiZMAの登場とともに、新たな文化が芽生えるのではと、楽しみです。

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「víz PRiZMA」 サービス紹介

「víz PRiZMA」は、伝統的な偲びの文化を継承しながら、藝術性を採り入れ、バーチャルならではの利便性と経済性を兼ね備えたバーチャル墓地です。

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víz PRiZMAサービス全体像

1.説明会 ― まずは、説明会へ サービスをご理解いただくため、全員とお話しします

説明会を開催し、ご関心をお持ちの方々全員とお話ししています。サービス内容や世界観をご理解いただき、魅力を感じてくださる方々をお迎えしたいためです。毎回、アットホームな雰囲気で、和やかな会話がはずんでいます。現在は、コロナに配慮してZoomで行っていますが、いずれはリアルの場も併用したいと思っています。多くの方のご参加をお待ちしています。

2.入会 ― 個別にご案内する専用リンクから手続きへ

説明会の後、入会をご希望の方には専用リンクをお渡しします。こちらから、お手続きをいただきます。
víz PRiZMAは、宗教とは一切関係ありません。ご信教にかかわらず、どなたでもご入会できます。

3.藝術ワークショップ ― 終わりを意識し、生きる時間に光をあてる、人生を変える1日

入会後、最初に「藝術ワークショップ」に参加いただきます。リアルな場に集まり、1日かけて行われるこのワークショップの目的は、終わりを見据えることで、生きている大切さを実感すること。まさに、人生を変えるターニングポイントです。
1日かけて、“より良く生きる”誓いを胸に、アーティストと共に作品を創ります。虹彩や声紋(声)といった、生体データの取得も行います。どなたでも、手軽にお楽しみいただける内容を厳選していますので、制作経験のない方も歓迎です。ここで創る作品は、人生を“より良く生きる”誓いの象徴、そしてやがて、誓いを胸に“より良く生きた”証として、デジタルアートとなって、バーチャル墓地に展示されます。

4.コミュニティ ― “より良く生きる”ための場・仲間・きっかけ

会員は、「コミュニティ」で終身お楽しみいただけます。「コミュニティ」は、会員の「より良く生きる」を支える伴走者。豊かな人生をお過ごしいただくための良質な場、仲間、きっかけを、ご提供していきます。
víz PRiZMAの出身母体である、東京藝術大学DOORプロジェクトをはじめとする、アーティストのネットワークを活用しながら、美術、音楽、書道、身体表現、文学など多彩なジャンルのアートを、展覧会や演奏会、セミナーや講演会、ワークショップ、サークル活動、勉強会といった、さまざまな切り口でご案内したいと考えています。活動を立ち上げたい会員の方を支援する仕組みも考案中です。
コミュニティは、現在準備中。2022年はじめにお披露目の予定です。

5.バーチャル墓地 ― 虹彩アートを展示し、記憶をタイムカプセルで未来へ

バーチャル墓地には、「ギャラリー」と「タイムカプセル」、ふたつの空間を用意しました。「ギャラリー」は、作品を展示する場所。藝術ワークショップで創った作品と虹彩データによるデジタルアートを展示します。「タイムカプセル」は、データを格納できる場所で、後世に届けたい選りすぐりのデータを入れることができます。いずれも、他界後はブロックチェーンに記録し、改ざん防止はもちろんのこと、その方が生きた証としての真正性を証明します。
残された方々は、スマートフォンやPCから、時と場所を選ばず、大切な方のまなざしと記憶を感じることができます。

6.プラットフォーム ― 時を経てつながったリンクが、いのちの流れを記録する樹形図に

会員同士のバーチャル墓地をつなげ(リンクをはり)、関係性を記録することができます。関係性には「パートナー」と「親子」の2種類があり、双方の合意をもってつなぐことが可能です。100年後、200年後、もっと先まで、生きた証が残され続けたとき、遠い未来の子孫らは、まるで大木の根元から枝葉を見上げるような形で、自身のルーツ、自らに流れ込むいのちの源流を感じることができるでしょう。
数々の技術革新を経ていくと想定されますが、私たちは、その時々の最先端のテクノロジーを駆使しながら、オリジナルデータを未来へつなぎ続けていく所存です。
その頃、一体どのような時代になっているのか。輝かしい未来であることを祈りつつ。
プラットフォームは、2022年にサービス開始予定です。

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瞳でつくる世界観—遺骨でなく、「虹彩アート」をお墓に

下邨 「víz PRiZMA」では、瞳(虹彩データ)をデジタルアートにして、バーチャル空間に展示します。
日本の法律では、墓は「遺骨を地中に埋葬したもの」。骨への想い入れは、仏舎利に由来するところだと思いますが、私たちはこの部分に、オリジナリティを発揮しました。“その人”を象徴するものとして、骨ではなく、瞳(虹彩)に着目したのです。虹彩は、黒目のまわりのドーナツ状の部分。ここの模様は、生体認証にも使われる、その人の独自性を示す大切な情報ですから。

柿田 そのインスピレーションは、突然降りてきました。瞳だ、虹彩だ、と。大切な人にもう会えない状況下で、その人の何を覚えていたいか、何を感じていたいか。やはり、“まなざし”ではないか、と。

船木 瞳(虹彩)には、宇宙に通じる深淵さがあります。のぞき込むと小宇宙のようですよね。人は、瞳を通じて世界をとらえ、また、瞳から内なる世界を外界に発信します。これは、視力の有無の話ではなく、「心の瞳」とも言われるように、目を閉じたところから始まる世界、目を閉じなければ見えない世界もあるのです。目を開けている・視力があるから見えるとは限らない。目を閉じている・視力がないから見えないとは限らない。「見ること」「観ること」。果てしなく深い世界だと思います。

柿田 虹彩のことを、英語ではiris(アイリス)といいます。これは、奇しくも、ギリシア神話では、虹を司る女神の名前。虹は、この世とあの世を結ぶ懸け橋で、アイリスは両方の世界を橋渡しする神なのです。虹彩をめぐる世界観が、古代より、この世とあの世であったこと、感慨深いです。

想いをこめた作品がまとう「ちから」

柿田 想いや願いをこめたモノは、その人にとって「ちから」となり、「拠りどころ」となります。
病気が早く良くなるように「千羽鶴」を折ったりします。「甲子園の土」は、球児たちにとって、努力と汗と活躍の象徴なのでしょう。戦時中は、出征する兵士の無事の帰還を願って「千人針」を渡していました。何気ないモノが、想いを込めたことによって、その人にとってかけがえのないものとなり、人生の苦境を支えたり、大きな挑戦の後押しをしたりします。

船木 “より良い人生”を思い描いて創るとき、まだ言葉にすらならない想いを、色や線が拾ってくれることがあります。絵の具の色合いや、線の流れを「イイ」と感じるとき、そこには必ず、自身の意識にすらあがらない価値観や想いを反映した何かがある。だからこそ、良いと思うのです。作品が「完成した」と思える瞬間も、同じです。自身を表現できたと感性が認めたところで、完成する。

下邨 「藝術ワークショップ」で制作した作品には、言葉では語り切れない、これから歩む素晴らしき人生への想いが込められています。できが良いとか悪いとか、そういう問題ではなく、“より良く生きる”を誓った自身の証なのです。バーチャル墓地のギャラリーに展示されるデジタルアートは、その人の想いや願いの結晶であり、それを携えて生き抜いた、充実した人生の象徴となるはずです。

「víz PRiZMA」—そしていのちは“光”になる 語源

「víz」は水、「PRiZMA」はプリズム、いずれもハンガリー語です。みずみずしい感性をもちながら、七色に輝く光をもって、社会の課題のかたわらにあり続けたい。もっと多くの、さらにたくさんの方々に出会い、プリズムの光をお届けするために、私たちはひとつひとつサービスを創っていきたいと思います。

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【víz PRiZMA】 https://viz-prizma.com
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