【Artists Interview ~藝術の力を社会へ~】#9

こんにちは、高橋です。2021年の大晦日いかがお過ごしでしょうか。

連続インタビュー企画【Artists Interview ~藝術の力を社会へ~】を更新いたしました。

9回目となる今回は、作品制作の経験を経て看護師となられた塚田尚子さんのインタビューです。

アート、モノづくりにおける視点とケアの現場の興味深い重なりについてお話を伺いました。

以下のリンクから、ぜひご覧ください。

Artists Interview #9 塚田 尚子(つかだ なおこ)さん

想定外の余白を楽しむ―モノづくりと医療を重ね合わせたその先

絵は気持ちで描く

こんにちは髙橋です。

今日は、わたしが絵を描くことについて、どう考えているのか。個人的な所感をお話しようと思います。

以前のわたしは、絵を描きたいと思っているのに描きたいものがなくて困っていました。描く力がなくなったのかと思うほどでした。 

時々、描きたいものはあったのですが、満足いくように描けないと思うと手が止まる。満足いくように描くには、手を動かして試行錯誤を重ね、資料と見比べながらイメージを固める作業を繰り返す。そうすれば仕上げまで進めて行けたはず。それができなかったのは、思い込みがあったからです。

自分の中の思い込みが、描くことに対して消極的にさせていました。しばらく描かない期間ができると、下手になっているんじゃないかと焦りも出てきます。上手く描かなければとか、スムーズに理想にたどり着けないのを、力不足と感じて気持ちが途切れてしまう。 

描かなくなったのは、そもそも描きたいものがない。描く目的がないからだということは、自分でもわかっていました。アイディアやひらめきを生むためのインプットも足りませんでした。描くこと自体が目的になると、絵は描けなくなってしまいます。 

そもそも絵は非言語のメディアです。何か伝えたいものがあって、伝えたい誰がいるから描き続けられるものだと思います。 

そんな思い込みをどうやって解いていけばいいのか悩んでいたとき、ある作品に触れました。こんなふうに絵を描いてみたいという気持ちが強烈に、しかし驚くほど自然に湧いてきました。 

再び描き始めたことでわかったのは、絵を描く力は落ちないということ。描きたい気持ちがでてくれば 、細かいところまで諦めずに調整したくなるのでクオリティがあがり、結果として思い通りの仕上がりになります。描きたいのに描けない。描きたいように描けないという、心のつかえを越えていくことができました。 

伝えたいことがあれば、人は自然と行動に移すことができます。例えば、面白い映画を見たら内容を人に話したくなることがあるでしょう。映画のどこに感銘を受けたのか自分の視点で魅力を伝えたくなるものだと思います。特に人に視聴をすすめたい時は、どんどん言葉が出てくるのではないでしょうか。 

絵は、思考や感情も含めた情報の伝達です。伝えたい気持ちがあれば絵が描ける。その本来的なところに立ち返ることができました。

わたしにとって、心ときめく作品との出会いがもう一度、絵に対する気持ちを整え温めてくれる存在となったのでした。

「過去」を考えることで浮かび上がってくるもの

こんにちは髙橋若余です。

過去をふりかえり、現在を見つめ、未来を展望する。
これが今取り組んでいる「víz PRiZMA」のワークショップの核です。

本日はこの3つの要素のなかでもとりわけ過去について、自らにあてはめて考えたことを書いてみます。
わたしにとって「過去をふりかえる」はとても困難です。

過去をふりかえるといっても、どうしても直近の数年間のちょっと苦々しい記憶が鮮明に蘇ってきます。なぜなら、よほど楽しいことでないかぎり、嫌なことやつまらないことの方を繰り返し反芻してしまうからです。
わたしは、本当に嫌なできごとは、現在の楽しみの総量を増やし、押し流すことで忘れるようにしてきました。
そもそも重要でないと頭の中で判断したことは、まるで穴が開いたように記憶からこぼれていて、高校時代の担任やクラスメートの名前すら曖昧です。
そして、過去をふりかえろうとすると、無為に過ごした時間、その時の無気力な感情に苛まれそうで…すこし恐ろしいのです。
そこでもっと過去に戻って、ちいさな子どものころはどうだったかと思い返すと、絵が好きだった祖母のこと、昔住んでいた家から見えた景色、夕焼けを見てこのピンクと紫の混じったような色が好きだと感じたことなど、ノスタルジックな記憶が思い起こされます。そうすると、なんとなく穏やかで暖かな気持ちになってきました。

過去には良い記憶もあれば、忘れたい記憶もあります。わたしの過去には、「これを成し遂げたから、今の自分を誇れるのだ。」と語って聞かせられるような、満足いく素晴らしい功績も残っていません。
しかしいくつかの記憶をこのように重層的にふりかえることで、では「今の自分はどうだろう?」と、対比としての現在が浮かび上がってきます。
今の自分自身とかつての自分を比べれば、たとえそれが亀の歩みであっても進歩していると捉えることができます。それは心の中で過去と現在を行ったり来たりしているうちに、変化や成長を求める気持ちが自分のなかにあることを自覚できたからです。

過去をふりかえることで、未来に対して前向きな気持ちを持てていることに気づきました。
わたしにとって将来はまだはっきりと像を持ちません。しかし最後には幸せになるための道のりを歩んでいるのだと信じて、この日々を送っていきたいと考えています。

【Artists Interview ~藝術の力を社会へ~】#7

こんにちは、高橋です。
私が執筆を担当する連続インタビュー企画【Artists Interview ~藝術の力を社会へ~】が更新されました。
今月は、アーツアライブ 認定アートリップ®︎ アートコンダクターとして活動する髙橋由美子さんのインタビューです。

認知症の方々の芸術的感性を刺激する対話型鑑賞プログラム「アートリップ®︎」の魅力を語っていただきました。

以下のリンクから、ぜひご覧ください。

アーティストが思うNFTの未来

今年に入ってから、NFTアートの高額落札のニュースがいくつかあり、NFTアートの知名度が一段と高まりました。
NFTアートとはデジタルアートにブロックチェーン技術を組み合わせたもののことで、その特徴は、「唯一性を証明できる」「改ざんできない」「データの作成者又は、所有者を記録できる」なのだそうです。

簡単にコピーできてしまうデジタルアートに唯一性を担保して、NFTのマーケットプレイスで所有権を売買できるというものです。
色々なサイトがその仕組みを解説しているのですが、私はデジタルアートの世界のことをほとんど知りません。そこで実際に世界最大規模のNFTマーケットプレイスOpenSeaにて作品を閲覧してみることにしました。

トップランキングを見ると、ピクセルアートやGIF、ゲームのキャラクター、文字列のみのものや、ジェネレーティブアートという、いくつかのパーツをソフトウェアのアルゴリズムで組み合わせて生成した作品など、デジタルアートの特性を強く訴えるコンセプトが人気のようでした。

これら以外のコンセプトでも多数出品されていますので、検索して「これいいな」という作品を閲覧しているだけでどんどん時がたってしまいます。
こういった作品群を鑑賞して、わたしも出品に挑戦しようかと思い始めています。

膨大な作品数のデジタルアートにNFTが活用されれば市場はより拡大していくことでしょう。
その一方でセキュリティ管理や、なりすましによる出品という問題には注意していく必要がありますが、今後発展していくであろう、新しいものを身をもって体験することは、後にふりかえって得難い経験になるのではないかと思いました。

NFTアートの今後を考えたときに、たとえば従来の絵画作品のようにキャンバスに描いた油絵が個人か美術館等に収蔵されていたとしても、著名な作家でないかぎり、アーティストが没するなどして活動を終えた後に、作品が人の目に触れる時期は限られています。回顧展が企画されたり、二次流通で高値落札されて話題になるというのは、ほとんど夢のようなもの。
アート作品は、それが制作された時代の空気が含まれます。そうなると必然的に生モノのような鮮度というか、人に見てもらえる期限があるのではないでしょうか。
NFTはバブル的に盛り上がっている分野ではありますが、アート作品の流通インフラとして確かなものとして整備普及が進めば、これまでのアート業界で培われてきたように作品の信用を形作り、作品の耐久年数を高めることでしょう。後世に残せる仕組みとして貢献してほしいと思います。

今週の担当は、高橋でした。

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