危機的な状況に「わくわく」する ~生命に仕組まれた、危機をブレークスルーするスイッチ~

コロナが全国的に猛威を奮い、日本全体では8人にひとり、東京では5人にひとりが、すでに罹患者になりました。我が家も、先週末から家族が罹患し、私も「濃厚接触者」として巣ごもりしているうちに、昨日から発症、「陽性」となりました。

症状が出ない方も多いそうですが、なんのなんの。39度の高熱に激しい喉痛。解熱剤を飲んでも飲んでも上がってくる熱の中で、「ああ、自分の身体がウイルスと闘っているなあ」と、不思議にも生きている実感、普段はあまり意識していなかった生命の底力が感じられるような気がして、体重を重力に預けながら「頑張れ」とつぶやいてみたりするのでした。

みなさんは熱がある時に、意外に「意識が冴えている」という感覚を持たれたことはありませんか? 熱でもうろうとしながらも、意識の一部分が研ぎ澄まされたように冷静に働き、ふだんありえないような閃きや思いつきが下りてきたりする。どこか「非日常」モードにスイッチが入った感覚です。ご経験のある方も多いのではないでしょうか? 危機的な状況になると、何かのスイッチが入る。生命は、もともとそういうふうに仕組みづくられているのかも知れません。そう言えば「火事場のバカ力」と言葉もありますね。

思えば、画期的なアイデア、ブレークスルーのヒントは、いつも危機的な状況と背中合わせで生まれてきました。「非日常」モードになると、「日常」では見えない突破口が見えてくる。絶体絶命のその先に、突破口がある。そんなふうにして、「奇跡」と言われるような事象を達成してきたいくつかの経験が、記憶の中にあります。「アポロ13」も、危機的な状況の中で、最後にブレークスルーを見いだしましたね。そんな感じです。

そう考えると、高熱が出て、図らずも「非日常」を体験できる今は、貴重なチャンスなのかも知れません。どんな閃きが出てくるのか、意識の中をさまよいながら、「わくわく」してきました。大いなる期待をもって、この待機期間を過ごしたいと思います。

世の中の罹患中の皆さま、どうぞお大事に。まだかかっていらっしゃらない方、どうぞお気をつけて。そして、医療関係者の皆さま、ありがとうございます。

ヨーロッパの風を受けて ~今夏の滞在レポート②~ 

ヨーロッパ滞在の後半は、ハンガリーからドイツへの引越と、新しいアパート探しでした。今夏、ハンガリーの芸術大学を卒業した三女。3年間暮らしたブダペストのアパートを引き払い、荷物を全部スーツケースに詰めて、ドイツに向かいます。

Hungarian Dance University 今年のバレエ科 卒業生

ちなみに、ダンスの世界はとてもグローバル。ブダペストの学校もこのように、世界各国から学生が集まっていました。バレエダンサーにとって、ウクライナやロシア、その周辺国は、魅力的な就職先です。伝統ある劇場やバレエ団が数多く存在し、日常にバレエを鑑賞する文化も根付いています。今年は、戦争が起こったことで、多くのダンサーが就職できず、すでに現地で活躍していた先輩ダンサーたちの多くが、職を辞しました。才能あるアーティストたちの活躍の場が狭まり、私たちがその姿にふれることができないというのは、人類にとって大きな損失だと、切なく残念に思うのです。卒業生の皆さんの各方面での活躍と、早期の戦争終結を祈ります。

荷物一式をスーツケースに詰め込んで引越。デュッセルドルフ空港にやってきました。

ドイツで向かう先は、Mönchengladbach(メンヒェングラートバッハ)。デュッセルドルフから鉄道で30分ほどの小都市です。同名のサッカーチームが本拠地を置く街で、そのせいか、チームのユニフォームTシャツを着ている人たちが多い気がしました。広場で遊ぶ子供たちのボールさばきも鮮やかです。

首都で観光地だったブダペストに比べると、ひっそりローカル。英語が通じにくい、案内所がない、ネットに情報がない、バスが使いこなせない、動き方がわからない… と途方にくれつつも、しっとりとした雰囲気が漂う街並みに癒されながら、アパート探し開始です。

オランダ国境にほど近い、ドイツ西部の街、Mönchengladbach(メンヒェングラートバッハ)

物件探しは難航しました。英語での問い合わせに応えてくれるところが少ない、家具付きが少ない。ドイツではキッチンにこだわる方が多く、自分好みのキッチンをあつらえ、引越の際には移設するそうです。よって多くの「家具なし」は、キッチンもない! 数少ない「家具付き」物件を端から当たりながら、滞在期間ギリギリのところで、運よく素敵な大家さんと出会って、握手することができました。

初めての場所で、ゼロからのスタート。いつもそうですが、人に出会い、さまざまな体験があり、ひとつひとつの小さな予定が積み重なって、新しい時間が創られていきます。見知らぬ人々が行き交う何でもなかった場所が、いつの間にか、友人たちが暮らすかけがえのない想い出の場所になっていきます。三女にとって、Mönchengladbachも、やがてまた、しみじみと振り返るホームタウンになるのでしょう。

最後に、何度も途方に暮れながら次の手を考えた、今回のアパート探し。困ったときにいつも助けてくれるのはカフェ。お世話になったカフェと、ドイツのアプフェルシュトゥルーデル(アップルパイ)の写真です。

ドイツのアップルパイ。リンゴジャムと、歯ごたえのあるごろごろリンゴに、シナモンがたっぷり。

ピンチの時こそ、くつろいで甘いもの。リラックスして冴えた頭で、次への突破口を考える。カフェは世界中で、人々のクリエイティビティを支えているのだと思いました。

ヨーロッパの風を受けて ~今夏の滞在レポート~ ①

ほぼ3年ぶりに日本を離れ、1ヶ月ほど欧州に滞在してきました。
色々な現地案件を詰め込み、日本とのやりとりもしつつ、オンラインでピッチ4件に参加とあわただしいスケジュールでしたが、いつもとは違う風を受ける感覚が心地よく、長らく自分が心身ともに“閉じこもっていた”と感じました。

とりとめもなく、欧州で思ったことを綴ってみます。

世界のハブDubai。深夜・早朝も各地からの発着便が絶えず、トランジット客が行き交う。

私たちは日頃、日本が真ん中あたりに位置する世界地図を意識に置き、毎日おいしくごはんをいただき、一喜一憂しながら仕事し、メディアの報道を映画のように眺め、家族や友人たちと幸せに過ごせる毎日を送っています。そのような中、そうとは気づかず平和ボケに陥り、視野が狭まり、思考が硬直していたかも知れないと気づかされた旅でした。

閑散とした成田空港から3便しか飛ばなかった夜、ドバイは発着便でごった返していました。感染対策をとりながらの経済活動全開で、世界の大動脈に心地よいハブを提供する小国。困難への対峙は、閉鎖と我慢でなく、工夫による日常の継続にも分があるのかも知れないと、思い直しました。「海外は感染対策がなっていない」と評しがちな日本ですが、果敢にウイズ・コロナに挑戦する世界と、もう少し足並みを揃えても良いのかも知れません。

ドナウ川に浮かぶマルギット島。週末の午後を噴水広場でくつろぐ人々。(Budapest, Hungary)

コロナよりも戦争の影響を感じてしまう欧州。エネルギーがひっ迫し、物価が高騰する中、ウクライナの方々は、目の前にいらっしゃいました。開戦からすでに6ヶ月。とにかく安全な場所に移り、仕事を探し、生き抜いていく方々の姿。武力行使はもとより、制裁も含め、それが人々の生活に及ぼしている影響を思うと、政治とは何であるのか、権力や武力を伴ったネガティブパワーをシールドする力を得ることはできないのか、深く想いを馳せずにはいられません。人類が様々な新しい力を手に入れた21世紀、もしかすると、人が人を虐げることをシールドする力は、意外に私たちのそばにあるのかも知れません。

ハンガリーワインの将来を担う、ワイン協会&バイオダイナミック農法の最前線Kristinusの皆さんと

心温まる出会いがありました。ハンガリーワイン協会のお力添えで、中央ヨーロッパ最大の湖バラトン湖畔のワイナリーを訪ね、自然派ワインに注力されている方々とお話することができました(⇒ 詳細はこちら)。冷戦に翻弄されて衰退した伝統のワイン造りを、30年かけて復活させ、さらに地球や人に優しい農業を目指す。数々のファミリー・ヒストリーに心打たれ、何とかこの方々の活動の一助になりたいと思うのでした。

ドナウ川クルージング船から、ブダ城を望む(Budapest, Hungary)
ドナウ川クルージングディナーでは、ST.ANDREAのPINOT NOIRに出会えました

後半はドイツに移動し、大奮闘。その様子は、また次週お伝えします!

ブドウの記憶 ~ブドウはワインになり、この世に存在した記憶を、時を超えて伝えるのです~

トカイ(ハンガリー)Gróf Degenfeldの華やかさ際立つ白ワインTerézia(Hárslevelű)

こんにちは。柿田京子です。関東地方も梅雨に入りました。傘が手放せない日が続きますが、みなさまお元気でお過ごしでしょうか?

ブダペストでハンガリーワインのおいしさに感動してから早3年。ハンガリーワイン協会をはじめ、さまざまな方々とのご縁がつながり、最近ワインの話題が増えました。

ワインは一切の混ぜ物なく、純粋にブドウだけから造るお酒。時間をかけ、樽で熟成させたり、瓶に詰めてから寝かしたりもしますが、その味の「9割はブドウ畑で決まる」と言われています。つまり、ブドウの種類とその土地の環境 ― 土壌や水、日当たりや風通し、気候など ― がワインの決め手。自然の不思議な力に、人が心をこめて寄り添い造りあげていく、芸術作品のようなプロダクトなのです。

ワインの味わいを表現する言葉は、実に繊細です。写真は、ハンガリー東部トカイ地方の名門ワイナリー、グロフ デゲンフェルド(Gróf Degenfeld)の白。使用ブドウは、この地方の地場品種ハールシュレヴェリュです。日本ではあまり馴染みのないブドウ品種だと思いますが、こうした珍しいブドウに数多く出会えるのも、ハンガリーワインの魅力のひとつ。
ちなみにこのハールシュレヴェリュは、とても主張のある存在感たっぷりの白で、私の「白」の常識を圧倒して覆してくれました。「モモや洋ナシ、リンゴ、グレープフルーツ、レモン、白い花、レモングラスなど様々な香りがギュッと詰まった華やかさ」なんて評されたりしています。

私のワインの師匠は、ワインの味わいから、実にさまざまなことを読み取られます。ブドウがどのような地域で育ったのか、寒冷地か温暖な場所か。日当たりは良かったのか、風通しはどうだったのか。「日当たりの良い小高い丘の上。さほど寒くない地域ですね。海が見えるところかもしれない。。少し、潮風が感じられる。」などと、グラスに注がれたワインから、広大な風景が拡がるような描写。あとからワイナリーの写真を見ると、実際それが、かなり当たっているのです。

ブドウ自体は、その年でいのちを終えますが、ワインになることでその記憶をつなぐのです。ボトルに詰められ、時を超えて、地域を超えて旅をして、見知らぬだれかの食卓で、そのブドウ畑の様子を再現して見せるのです。受け取った私たちは、見たことのない景色に心躍らせて、ちょっと幸せになれる。

ワインに触れながら、これは、私たちがvíz PRiZMAで行っていることと同じだな、と思ったのでした。かつて生きた人の想いを受け取り、少し幸せになるアートの世界は、ワインみたいなものかな、と思ったりするのでした。

バラに囲まれて過ごした5月 から、初夏へ ~花言葉に想う~

each toneがお世話になっているシェアオフィス、RYOZAN PARK 巣鴨GRAND。この建物の入口には見事なバラのアーチがあり、今月は、赤・ピンク・白、色とりどりのバラに囲まれ、日々癒されていました。その5月もあと2日。日差しが初夏の訪れを告げています。

バラは「美」「愛」の花言葉をもち、さまざまなプレゼントシーンや、愛の告白にも贈られる人気の花ですね。花の色(赤、ピンク、白、紫、黄色、緑など)ごとに意味合いが異なり、また贈られる本数によっても、さらに意味が加わります。ご存知でしたでしょうか?このあたり、お詳しい方々も多いことでしょう。花言葉に寄せて好きな花を選び、想い込めて贈る―ここからこれまでに、数えきれないほどの物語が生まれたことと思います。

思えば、私たちの毎日は、見て聞いて、感じて、想いをこめて発信することの連続です。生活とは、生きるとは、この繰り返しなのだなぁとしみじみ。込めた想いによって未来が変わることも。そして、どのような想いを込めるかは、本当に自分次第。様々なことを感じる毎日ですが、せっかくならば、少し心を強くして、良い未来が望めそうな想いを込めてみたいですね。

私たちの1stプロジェクト「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)も、「想いを込めて贈る」ところは花と同じです。テクノロジーの力を借りたおかげで、時間や空間を超えて、未来の人々に想いを届けることができるようになりました。昔であれば、動物の絵が描かれた洞窟の壁画や、象形文字を刻んだロゼッタストーンなどがvíz PRiZMAの仲間かも知れません。
víz PRiZMAのお客さま方が、どのような想いを込められるのか? 未来の人々が、そこから何を感じとってくれるのか? 壮大な実験⁈が始まっています。

ちなみに、バラのお話に戻りますと、「青色のバラ」はもともと自然界になく、そのために青バラは「不可能」「存在しない」という花言葉をつけられてしまった幻の花でした。ところが2002年、サントリーがバイオテクノロジーを用い、パンジーの青色遺伝子を組み込むことで、ついに青いバラを実現させます。日本発です!
これにより、それまで「不可能」とされていた花言葉も、「夢をかなえる」「奇跡」に一変。今では、青バラは普通に見かける花となり、夢に向かって挑戦する人によく贈られるそうです。

季節の移り変わり、時の流れ、時代の流れを感じながら、青いバラのよういに、ゆるやかに世界を変えていきたいと、きょうも想いを新たにしています。

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