【Artists Interview ~藝術の力を社会へ~】

Artists Interviewロゴマーク

当サイトの人気コーナー、リニューアルのお知らせです。
ロゴも新たに、【Artists Interview ~藝術の力を社会へ~】として毎月月末に掲載して参ります。

過去連載分はメニューまたは、下記からどうぞ。

【特別インタビュー 3】だれも見たことのない世界をデザインする 瞳の記憶を未来へ 「víz PRiZMA」ブランドづくりへの挑戦

会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)。今夏始動するこのサービスは、インターネット上で、「この世」と「あの世」をつなぐ。さらに、生前から他界、その後の遠い未来まで、このサービスが紡ぐ時は、人の一生よりはるかに永い。まだだれも目にしたことのない場所、時代を、どのようにデザインするのか? どのように表現するのか?

「víz PRiZMA」のブランドサイトのデザインをしたSHIMA ART&DESIGN STUDIOの小島沙織さんと島田耕希さん。そしてeach tone社 Chief Designing Artistの下邨尚也が、「víz PRiZMA」ブランドづくりへの挑戦を語ります。

小島・島田・下邨 写真
(左から)小島沙織さん、島田耕希さん、下邨尚也。
メインビジュアル

víz PRiZMAという世界観の構築

下邨 「víz PRiZMA」は、「瞳」(虹彩)から拡がる世界観でできています。ひとは瞳で世界をとらえ、自身の内なる世界を、瞳を介して世界へ発します。時として、目は言葉よりも雄弁です。瞳は、視力の有無にかかわらず、本質的な世界をとらえます。瞳(虹彩)は黒目のまわりのドーナツ型の部分ですが、その文様は、その人の独自性、唯一無二の存在であることを象徴する部分です。虹彩の模様は、成長過程で、まばたきなどでつくられるシワですので、DNA由来ではありません。よって、DNAが同じ一卵性双生児であっても、虹彩の模様は異なり、虹彩データは認証に使われたりするのです。虹彩のことを英語でiris(アイリス)と言います。アイリスは、ギリシア神話に登場する「虹」の女神の名前。虹は、この世と天界を結ぶ懸け橋で、アイリスは、ここを司っているのです。瞳(虹彩)は、まさに、この世とあの世をつないでいるといえるでしょう。

ブランドロゴタイプは、優美でありながら、力強さを強く意識しました。元となる欧文フォントは、「Optima」という特徴のあるサンセリフ体をベースにしています。「víz PRiZMA」というブランドネーミングが決まった瞬間に、このフォントが相応しいなと感じました。
ブランドカラーについては、上品に、けれども意志を強く、思い切ってモノトーンとして、少しだけ黒の濃度を落としております。彩度を持たせなかったという点で、皆さまの創造の余地を残し、且つ、どの様にも変容しないという二律背反した意味を含ませました。これは“偲び”や“祈り”という行為を強く意識したものです。創造とそれらの行為は、一見、類似性が高いように見えますが、思考のベクトルが、創造では外側に、“偲び”や“祈り”では内側に向いており、相反するものなのです。後者は非常に独自性が高く、ある対象に対して、個々がそれぞれ抱く強い感情であるからです。同じ理由から、「víz PRiZMA」はロゴタイプのみとし、ロゴマークは持たないデザインとしました。

このような、未知な世界観にあふれたサービス。お二人は、このお話をした時に、開口一番「興味深い」と仰ってくださいました。どの辺りを興味深いと思ってくださったのでしょう?

小島 「祈り」という行為にすごく興味がありました。私は普段から、西洋美術史を語る上で切り離せない「キリスト教」の勉強をしていて。信仰心が薄いとされる日本人が、どうやって「祈り」という場を持つのか。どうやって「死」に立ち向かっていくのか。そういったことに向き合っていくブランドのこれからに興味を持ちました。

下邨 音楽の発生もキリスト教の存在は外せないですよね。グレゴリオ聖歌とかもそう。

島田 僕は、みえるもの・みえないものにすごく思い入れがあって。みえないけれども感受出来る世界をブランドの視点を通して表現してみたいなと思いました。詩人・吉野弘さんの「眼・空・恋」という詩が好きで。「水晶体」をモチーフにしている詩なのですが、打ち合わせでお話しを伺ったときに思い浮かべました。あとは、虹彩を個人識別に使っているところにも興味をもちましたし、既存のお寺や墓地を否定するわけではなく、多様な選択肢のひとつとしてサービスがあることに共感しました。

下邨 ブランドサイトのビジュアルを生み出すことのご苦労や工夫ってありましたか?

島田 “偲び”や“祈り”という繊細なテーマに触れることの難しさを感じました。併せて、ブランドサイトとしての訴求性も兼ね備えないといけないなかで、2回目の打ち合わせで、下邨さんの「意志を伝えていくというよりは、ただ、そこにあることがいいのです。」という言葉を一番心に留めました。víz PRiZMAのロゴやサービス概念から、「水」「光」というイメージは早い段階からイメージしていまして、着地の「感情」から、どういった表現、形、色にしていくかを考えていました。

小島 行き着く先の「感情」は、二人の中で、シンクロ率がすごく高くて。島田の方でビジュアルを上げてきて、それが相応しいか私がジャッジしていく感じでした。

下邨 素晴らしいチームワークですね!

「自分を失わせる」ことにある、美しさ

島田 商業デザインの現場と違って、二人でやっている今はまるで、離れ小島に居るような感覚です。自分たちはデザイナーとしてこうだ! みたいな「デザイナー」の枠を決めずに、楽しいと思うことを好き勝手やっている感じです。

下邨 世間の方は、「私はデザイナーしています。」って申し上げると、ほぼ「ファッション・デザイナー」を思い浮かべられますよね。島田さんは離れ小島に移って、なにが違うとお感じになりましたか?

島田 仕事の関われる範囲が違いますよね。デザインチーム内の一スタッフとしてでは、制作しても、制作物を使う人の顔がみえない。僕は受け手の感情から逆算して作っていきたい性分なので、その人を知らないと、その人のイメージがつくれない。独立してからは、直接クライアントと一緒にお話できるような環境をつくれたことが良かったし、それを求めていました。自分のフィルターで相手の想いをいかに歪めずに伝えるかを意識しています。

小島 美術予備校時代からそうですが、「デッサン」の大切さをすごく感じていて。モチーフなり、人なり、対象を「観察」して、どう伝えるか。そこに、どういう「空気」「感情」があったかを伝えたいです。見たものをそのまま写し取るだけだと、それは対象の説明だけになってしまって。どうやって、その時の「雰囲気」まで伝えるかを大切にしています。

島田 同じものをみても、答えはひとつじゃないですよね。今日はそうでも明日は違う。その観察から僕らの場合は「自分を失わせる」ようにしていて。クライアントさんがどう感じているかを憑依させて、こういう表現がいいかも! と、提案しています。だから毎回テイストも決まっているわけでもなく、バラバラかもしれません。僕ららしいね、とはよく言われますけどね。

下邨 デザインって、制作物を納品しているようでいて、実は“発信者”と“受け手”の「人間同士の関係性」をつくっているのですよね。そこで、面白いなと思ったのは、テイストをクライアントにあわせつつも、お二人「らしい」仕事と言わせる兼ね合いはどこにあるのかなと。

島田 自分の美的感覚にそぐわないと思うものはつくらない、というのが僕たちらしさを貫いているのだと思います。

小島 そういうものを自然と選択しているのはあるかも知れませんね。私たちがなんでデザイナーをしているのかって、「美しい」と思うものがちゃんと日本にも残っていければ良いなと思っています。ビジュアル的な「美しい」ものだけではなく、感情や関係性も含めて「美しい」ものを大切にしています。

下邨 お二人はお仕事において、どの様に連携・役割分担されてらっしゃるのですか?

小島 島田と意気投合したきっかけになりますが、私は子供の頃から、ピエール・ボナール*の模写を続けていまして。浪人時代に島田とはじめて会ったとき「僕はエドゥアール・ヴュイヤール**が好きなんだよね。」と言われたのです。(*,** 共にポスト印象派とモダンアートの中間点に位置する「ナビ派」と呼ばれる画家。)この二人の画家は大親友でして。同じ審美眼を持つ島田とは、将来的にも同じビジョンを描けるなと。この人の目は間違いないなと思いました。学生時代に、グループワークの授業もすごく多くて。私はそれが苦手で。みんな美的感覚が違うのに、なぜ共同で制作しなければならないのだろう? と思って。でも島田とだけは、グループワークが出来ました。

ゆずらないこだわり

下邨 多様な価値観の現代、グループワークを通り越して、一緒に生きていかなければいけない世の中ですよね。その辺りのクライアントとのコミュニケーションを、お二人はどの様に関わっていけば良いとお考えですか?

島田 each toneのみなさんは、しっかり良いものをつくろうと思ってくださるから。それがよかったなと思いました。いろいろな意味で「ゆずらない部分」を持っているって、とても大切だと思います。

小島 クライアントさんにお願いされたときに、なるべくお話はお聞きするようにしています。けれども、「こだわり」がない方、「お任せするから、好きにやってよ」という依頼にはあまり応えない様にしています。例えばご予算の少ないクライアントさんとお仕事することもあっても、良いデザインのものをつくりたいんだよね! という方は嬉しいです。じゃあ、出世払いで! とか、物物交換で! とか。

下邨 「限られた“時間”」を共通の「こだわり」でご一緒できるのって、ステキですよね。すごく生きている実感がありますよね。

小島 デザイナーをしていて一番楽しいのは、様々な価値観の方、多種多様な職業の方、しかもそれぞれの「こだわり」を持った方とご一緒できること。すごく嬉しいです。

島田 そこでも、その方を「観察」して「こだわり」を探っていきます。だから、クライアントによりデザインを進めていく工程も時間もまちまちです。

下邨 お二人といつもお話ししていて思うのは、すごく「聞いてくださる」姿勢。だからこそ、こちらもしっかりお伝えしなきゃ、って毎回思います。すごく有意義な時間です。やはりアートの基本は「観察」がキーワードですね!

デザイナーという選択

下邨 お二人は、なぜデザイナーという職業を選ばれたのですか?

島田 今も目指してないかも(笑)。未だにデザイナーになろうと思ってない(笑)。社会的に、大人としてデザイナーを自称しているだけで、肩書きとか何者かを語りたいわけではないです。

小島 今やりたいことがたまたまデザインであって、絵も描くし、本も読むし。やりたいことをその時その時、ずっと保っているという状態かも知れません。とはいえ、私は将来の夢はずっとデザイナーでした。うちは両親も祖父も芸術家で。小さい頃から絵は好きでしたが、祖父の作品には勝てっこないなと子供ながらに意識して。彼は天才だなと。でも両親も祖父も、自身の作品のプロデュースはうまくなくて。観せることよりも作ることに熱中していたなと。それを私が代わりに伝えていきたいと。自分の周りのステキな人たちを紹介したい。それがデザイナーを志したきっかけかなと思います。

下邨 クライアントの依頼を細やかに「観察」し、その「ゆずらない」要望や「こだわり」を見いだし、そして、ご自身は「自分を失わせ」ながらも、反面、飽くなき「美しさ」の追求を怠らない。一見、矛盾する「意識」のような移ろい易いものを、お二人の関係性が上手に支え合って、だれも見たことのない世界を視覚化している。その背景には、クライアントの意志をより多くの人に伝えたいという気持ちがベースにある。そんなお二人が、víz PRiZMAのサイトビジュアルをしてくださったことが、すごいご縁だし、光栄です!

************プロフィール************

SHIMA ART&DESIGN STUDIO
小島沙織と島田耕希によるクリエイティブスタジオ。2016年に設立。ビジュアルコミュニケーションを中心に、絵・写真・言葉を用い、紙から空間まで媒体にとらわれない総合的なデザインワークを行う。また、個人としてもアートワークを行うほか、染織作家と共にテキスタイルプロダクトブランド「WARP WOOF 139°35°」を設立するなど、多角的な活動と表現を通し、創造と生活の美の術を探求する。

小島沙織|COJIMA Saori
Designer
1987年千葉県生まれ。2013年に東京藝術大学デザイン科修士課程を修了後、同大学デザイン科で3年間教育研究助手として勤務。2016年にSHIMA ART&DESIGN STUDIOを設立。

島田耕希|SHIMADA Koki
Designer
1986年埼玉県生まれ。2012年に東京藝術大学デザイン科を卒業。同年、イメージコンベイサービスに入社。2017年に退職し、SHIMA ART&DESIGN STUDIOに参画。

下邨尚也|SHIMOMURA Naoya
Chief Designing Artist
1975年東京都生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。印刷会社、デザイン事務所、フリーランスを経て、東京藝大DOORプロジェクト受講後、2021年にeach tone合同会社の設立メンバーに。

each tone合同会社
東京藝術大学DOORプロジェクト発スタートアップ。2021年設立。「アート思考」「デザイン思考」といった藝術的な発想で世界をとらえ、「アートプロジェクト」で社会課題を解いていく会社。目下、1stアートプロジェクトである、会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)をローンチし、オンラインサービス説明会など、精力的に活動中。

************連絡先************

【SHIMA ART&DESIGN STUDIO】https://shimaads.com
【each tone】https://each-tone.com
【víz PRiZMA】https://viz-prizma.com
【mail】contact@viz-prizma.com

【特別インタビュー 2】「víz PRiZMA」 ― そして、いのちは光になる “生きる”を支え、瞳の記憶を未来へつなぐ、バーチャル墓地

東京藝術大学DOORプロジェクト発スタートアップ each tone社が、今年5月に発表した、会員制バーチャル墓地「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)。「そして、いのちは光になる」のキャッチコピーがついたこのサービスは、アーティストが創る、新しい“偲び”のかたちです。

「víz PRiZMA」のサービスご紹介と併せ、その魅力について、創業者3名が語ります。

メンバー写真
写真:(左から)船木理恵(Chief Planning Artist)/下邨尚也(Chief Designing Artist)/柿田京子(Chief Managing Artist)

21世紀のお墓と供養を考える ― 「バーチャル墓地」への期待

柿田 いま、お墓は社会問題です。少子高齢化が進み、墓じまいが増加。首都圏や海外に住み、地元に戻る予定のない地方出身者。先祖代々の墓を長男が守るというしきたりの継承は、難しくなっています。法事なども、集うべき方々が高齢で集まれない。日常のお墓管理も、負担になっているケースが多いのではないでしょうか?この傾向は、近隣アジア諸国でも同様です。日本以上に少子高齢化が著しい中国では、すでに墓所が不足。庶民がお墓をもつハードルが上がっていると聞きます。

下邨 このような状況を受け、伝統を大切にしながら、21世紀に供養と偲びの文化をどのように受け継いでいけばよいのか、アーティストとして自分たちにできることを真剣に考え、かたちにしたのが「víz PRiZMA」です。
もとよりアートは、答えのない課題に寄り添うのが得意です。生きること、死ぬこと、あの世といったテーマは、古来より多くの藝術作品に登場します。大切な人を想う切なさ、やるせなさ。自分の力ではどうすることもできない不条理。藝術は、そのような「人」の想いに、ひっそりと寄り添い、優しく、柔らかく、生きていくことを支えます。

船木 墓地をバーチャル空間(インターネット上)に建立することで、アクセスや管理の課題が解消できます。大切な人は、いつも身近に感じていたいですから、時間や場所を気にせず、スマートフォンから会いに行く。既存の墓地や仏壇の代わりにもなりますし、併用しても良い。これまで「家」の要素が大きかった弔いのかたちが、少し「個」に寄り、「自身の心の拠り所としての偲び」が、一層クローズアップされてくる。víz PRiZMAの登場とともに、新たな文化が芽生えるのではと、楽しみです。

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「víz PRiZMA」 サービス紹介

「víz PRiZMA」は、伝統的な偲びの文化を継承しながら、藝術性を採り入れ、バーチャルならではの利便性と経済性を兼ね備えたバーチャル墓地です。

メインビジュアル
víz PRiZMAサービス全体像

1.説明会 ― まずは、説明会へ サービスをご理解いただくため、全員とお話しします

説明会を開催し、ご関心をお持ちの方々全員とお話ししています。サービス内容や世界観をご理解いただき、魅力を感じてくださる方々をお迎えしたいためです。毎回、アットホームな雰囲気で、和やかな会話がはずんでいます。現在は、コロナに配慮してZoomで行っていますが、いずれはリアルの場も併用したいと思っています。多くの方のご参加をお待ちしています。

2.入会 ― 個別にご案内する専用リンクから手続きへ

説明会の後、入会をご希望の方には専用リンクをお渡しします。こちらから、お手続きをいただきます。
víz PRiZMAは、宗教とは一切関係ありません。ご信教にかかわらず、どなたでもご入会できます。

3.藝術ワークショップ ― 終わりを意識し、生きる時間に光をあてる、人生を変える1日

入会後、最初に「藝術ワークショップ」に参加いただきます。リアルな場に集まり、1日かけて行われるこのワークショップの目的は、終わりを見据えることで、生きている大切さを実感すること。まさに、人生を変えるターニングポイントです。
1日かけて、“より良く生きる”誓いを胸に、アーティストと共に作品を創ります。虹彩や声紋(声)といった、生体データの取得も行います。どなたでも、手軽にお楽しみいただける内容を厳選していますので、制作経験のない方も歓迎です。ここで創る作品は、人生を“より良く生きる”誓いの象徴、そしてやがて、誓いを胸に“より良く生きた”証として、デジタルアートとなって、バーチャル墓地に展示されます。

4.コミュニティ ― “より良く生きる”ための場・仲間・きっかけ

会員は、「コミュニティ」で終身お楽しみいただけます。「コミュニティ」は、会員の「より良く生きる」を支える伴走者。豊かな人生をお過ごしいただくための良質な場、仲間、きっかけを、ご提供していきます。
víz PRiZMAの出身母体である、東京藝術大学DOORプロジェクトをはじめとする、アーティストのネットワークを活用しながら、美術、音楽、書道、身体表現、文学など多彩なジャンルのアートを、展覧会や演奏会、セミナーや講演会、ワークショップ、サークル活動、勉強会といった、さまざまな切り口でご案内したいと考えています。活動を立ち上げたい会員の方を支援する仕組みも考案中です。
コミュニティは、現在準備中。2022年はじめにお披露目の予定です。

5.バーチャル墓地 ― 虹彩アートを展示し、記憶をタイムカプセルで未来へ

バーチャル墓地には、「ギャラリー」と「タイムカプセル」、ふたつの空間を用意しました。「ギャラリー」は、作品を展示する場所。藝術ワークショップで創った作品と虹彩データによるデジタルアートを展示します。「タイムカプセル」は、データを格納できる場所で、後世に届けたい選りすぐりのデータを入れることができます。いずれも、他界後はブロックチェーンに記録し、改ざん防止はもちろんのこと、その方が生きた証としての真正性を証明します。
残された方々は、スマートフォンやPCから、時と場所を選ばず、大切な方のまなざしと記憶を感じることができます。

6.プラットフォーム ― 時を経てつながったリンクが、いのちの流れを記録する樹形図に

会員同士のバーチャル墓地をつなげ(リンクをはり)、関係性を記録することができます。関係性には「パートナー」と「親子」の2種類があり、双方の合意をもってつなぐことが可能です。100年後、200年後、もっと先まで、生きた証が残され続けたとき、遠い未来の子孫らは、まるで大木の根元から枝葉を見上げるような形で、自身のルーツ、自らに流れ込むいのちの源流を感じることができるでしょう。
数々の技術革新を経ていくと想定されますが、私たちは、その時々の最先端のテクノロジーを駆使しながら、オリジナルデータを未来へつなぎ続けていく所存です。
その頃、一体どのような時代になっているのか。輝かしい未来であることを祈りつつ。
プラットフォームは、2022年にサービス開始予定です。

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瞳でつくる世界観—遺骨でなく、「虹彩アート」をお墓に

下邨 「víz PRiZMA」では、瞳(虹彩データ)をデジタルアートにして、バーチャル空間に展示します。
日本の法律では、墓は「遺骨を地中に埋葬したもの」。骨への想い入れは、仏舎利に由来するところだと思いますが、私たちはこの部分に、オリジナリティを発揮しました。“その人”を象徴するものとして、骨ではなく、瞳(虹彩)に着目したのです。虹彩は、黒目のまわりのドーナツ状の部分。ここの模様は、生体認証にも使われる、その人の独自性を示す大切な情報ですから。

柿田 そのインスピレーションは、突然降りてきました。瞳だ、虹彩だ、と。大切な人にもう会えない状況下で、その人の何を覚えていたいか、何を感じていたいか。やはり、“まなざし”ではないか、と。

船木 瞳(虹彩)には、宇宙に通じる深淵さがあります。のぞき込むと小宇宙のようですよね。人は、瞳を通じて世界をとらえ、また、瞳から内なる世界を外界に発信します。これは、視力の有無の話ではなく、「心の瞳」とも言われるように、目を閉じたところから始まる世界、目を閉じなければ見えない世界もあるのです。目を開けている・視力があるから見えるとは限らない。目を閉じている・視力がないから見えないとは限らない。「見ること」「観ること」。果てしなく深い世界だと思います。

柿田 虹彩のことを、英語ではiris(アイリス)といいます。これは、奇しくも、ギリシア神話では、虹を司る女神の名前。虹は、この世とあの世を結ぶ懸け橋で、アイリスは両方の世界を橋渡しする神なのです。虹彩をめぐる世界観が、古代より、この世とあの世であったこと、感慨深いです。

想いをこめた作品がまとう「ちから」

柿田 想いや願いをこめたモノは、その人にとって「ちから」となり、「拠りどころ」となります。
病気が早く良くなるように「千羽鶴」を折ったりします。「甲子園の土」は、球児たちにとって、努力と汗と活躍の象徴なのでしょう。戦時中は、出征する兵士の無事の帰還を願って「千人針」を渡していました。何気ないモノが、想いを込めたことによって、その人にとってかけがえのないものとなり、人生の苦境を支えたり、大きな挑戦の後押しをしたりします。

船木 “より良い人生”を思い描いて創るとき、まだ言葉にすらならない想いを、色や線が拾ってくれることがあります。絵の具の色合いや、線の流れを「イイ」と感じるとき、そこには必ず、自身の意識にすらあがらない価値観や想いを反映した何かがある。だからこそ、良いと思うのです。作品が「完成した」と思える瞬間も、同じです。自身を表現できたと感性が認めたところで、完成する。

下邨 「藝術ワークショップ」で制作した作品には、言葉では語り切れない、これから歩む素晴らしき人生への想いが込められています。できが良いとか悪いとか、そういう問題ではなく、“より良く生きる”を誓った自身の証なのです。バーチャル墓地のギャラリーに展示されるデジタルアートは、その人の想いや願いの結晶であり、それを携えて生き抜いた、充実した人生の象徴となるはずです。

「víz PRiZMA」—そしていのちは“光”になる 語源

「víz」は水、「PRiZMA」はプリズム、いずれもハンガリー語です。みずみずしい感性をもちながら、七色に輝く光をもって、社会の課題のかたわらにあり続けたい。もっと多くの、さらにたくさんの方々に出会い、プリズムの光をお届けするために、私たちはひとつひとつサービスを創っていきたいと思います。

【each tone】 https://each-tone.com
【víz PRiZMA】 https://viz-prizma.com
【mail】 contact@viz-prizma.com

【特別インタビュー 1】アーティストと創る、新しい“偲び”のかたち「víz PRiZMA」

「バーチャル墓地」「コミュニティ」、そして未来への「プラットフォーム」

―each toneの1stプロジェクトであるバーチャル墓地サービス、「víz PRiZMA」(ヴィーズ プリズマ)とは、どのようなサービスなのでしょう?

柿田 「víz PRiZMA」には、3つの構成要素があります。
1つは、従来のお墓や弔いといった概念を継承しながらも、利便性と経済性を兼ね備え、かつ、藝術的な要素を持った「バーチャル墓地」。
2つ目は、生きる時間にフォーカスし、会員の皆さまの持てる力を最大限に発揮しながら、人生を謳歌していただくための「コミュニティ」。
3つ目は、ブロックチェーン技術を用いてデータの真正性を確保し、医療データをはじめとする各種データと紐づけることを可能にする「プラットフォーム」です。

ちなみに、「víz PRiZMA」は、ハンガリー語。「víz」は、生命を育む根源であり、多くの神話や宗教でこの世とあの世を隔てるものとして表象されている「水」を、一方、「PRiZMA」は光の進行方向を変えてカラフルな可視光線へと分散させる分光器「プリズム」を意味します。藝術・アートの力を活かし、“死”という“闇”に光を当てることで、会員の皆さまに、限りある命の時間をよりよく生きる方法を発見していただきたい。「víz PRiZMA」では、そのためのきっかけをご提供したいと思っています。

柿田京子

―「バーチャル墓地」について詳しく聞かせてください。

柿田 従来のお墓とも、既存のバーチャル墓地とも、全く違ったコンセプトに基づくサービスです。目の「虹彩」という唯一無二の生体情報のデジタルデータを、アルゴリズムによって解析・加工して、本人の独自性・唯一性を象徴するような藝術作品を創り、デジタル空間で保管、未来へおつなぎします。会員の皆さまには、アーティストとともにワークショップにご参加いただき、身体全体を使って作品制作に取り組んでいただきます。ワークショップでは声や動き、作品の色合いや線の特徴などをデータとして収集し、「バーチャル墓地」の創造に活用していきます。ネガティブなイメージとは一切無縁の、夢のある“偲び”のかたちをご提供いたします。

下邨 アートの本質は、単なるモノにコンセプトや情報、想いをのせることで、新たな意味や価値を生み出す点にあります。例えば、ゴッホの絵画作品でも、モノとしては、紙やキャンバスなどの支持体の上に、顔料が載っているに過ぎません。ところが、ゴッホの作品には、彼が生み出したコンセプトや思想、意図が表現されており、多くの人々はそれに唯一無二の価値を見出しているわけですね。お墓も同様です。“熱意”や“愛”といった感情をのせることによって、価値のあるお墓をつくることができるはずなんです。「víz PRiZMA」では、特にここをデジタル技術の活用によって、実現するわけです。

―「コミュニティ」や「プラットフォーム」についてはいかがでしょうか。

柿田 「コミュニティ」に関しては、アートセラピーやミュージックセラピー、ワークショップなどのイベントの開催を考えています。これらのイベントには、さまざまな分野で活躍中のアーティストにも参加してもらう予定です。豊かな人生をお過ごしいただくための“場”を提供するとともに、アーティストが自らの能力やスキルを活かしながら自立して活動できる環境の創造にも貢献していきたいと思っています。

「プラットフォーム」については、自らの生きた証が未来の世代のために役立つ、未来の世界への貢献につながるスキームを構築するのが目標です。例えば、ある人の一生分の医療・健康データをチップ1枚に格納する時代が遠からずやってきますが、これらのデータを代々継承していくことで、子孫が病気になったときに、それが遺伝子由来なのか、環境由来なのかを判定できる、など。こうした機能は、今すぐに役立つ類のものではありませんが、リリース時から実装する予定です。

船木 「víz PRiZMA」を構想しはじめた当初は、お墓ということで「死」にフォーカスしがちでした。ただ、議論を進め、サービスの中身をつくりあげていくうちに、このサービスは「死」でなく、いかにして、これから先の人生をより良いものにしていくかという「生」にフォーカスを当てるサービスだということを確信しました。「víz PRiZMA」を通して、自らの生を振り返るとともに、これからの生き方を見つめ直してほしい。何が「より良い人生」かは一人ひとり違いますし、“正解”はないと思いますが、自分自身の“解”を見つけ出し、希望を持って生きていくきっかけをつかんでいただきたい。そして、自分の人生を自ら創り上げ、選び取っていく楽しさを感じてもらえればと思っています。

船木理恵

アートを学んだ同志と共に、そして「瞳」との出会い

―each tone合同会社のメンバーは皆さん、東京藝術大学「DOORプロジェクト(Diversity on the Arts Project)」の修了生ですね。「バーチャル墓地」の基本的なコンセプトは、ここでの学びから着想されたのでしょうか?

柿田 そうです。「DOORプロジェクト」は、「アート×福祉」をテーマに「多様な人々が共生できる社会」を支える人材を育成するプログラムなのですが、カリキュラムの中には墓石をデッサンする課題もありましたし、何よりも藝大の周辺にはたくさんの霊園や墓地がありました。墓地を横目にみながら大学に通うなかで、ふと、お墓は“社会問題”だと思ったんです。少子高齢化や人口の東京一極集中、血縁関係の希薄化などの影響により、“墓守”として定期的にお参りしたり、掃除をしたりする人がいない、あるいは、先祖代々のお墓を継承する人がいないといったケースに直面する人が増えています。また、首都圏でお墓を建てるには200万円以上もの高額な予算が必要です。

従来の墓地のオルタナティブとして登場した「バーチャル墓地」についてもリサーチしてみましたが、デザインやつくりの洗練さが気になったり、定期的にログインして訪れたい気持ちになるのかどうか、心許ない部分がありました。また、Facebookの“追悼アカウント”や、VR(バーチャル・リアリティ)技術を使って故人との再会を果たすサービスは、“偲び”には生々しすぎる印象でした。こうした状況に対して違和感を抱いている方、課題として捉えている方は少なくないはずで、アートやデジタルの力を活かして、新しいお墓のかたちを創ることができれば、社会的課題の解決に寄与できるのではないかと思ったのです。

下邨 私を含めて、先祖代々のお墓に定期的にお参りに行くという人はどんどん少なくなっています。お墓は、ある種の象徴として、故人をオルタネイトする(代替する)機能を果たすべきだと思うのですが、コロナ渦により帰省もままならなくなり、海外在住者も増えた現代では、大きな石に名前が彫られただけの、単なる“モノ”になってしまっている。実は、こうしたときこそ、アートの出番なんですよね。

―「バーチャル墓地」のアイデアをどのようにカタチにしていったのでしょう?

柿田 「DOORプロジェクト」参加者のオンラインコミュニティでプレゼンを行って有志を募り、2020年9月から7人で、リサーチやディスカッションを進めました。企画は順調に進んだのですが、核心を突いたアイデアはなかなか降りてきませんでした。突破口が拓けたのは、ある日。目の前に座ったその人の目が、実に綺麗で澄んでいたのです。瞬間「ああ、これだ!」と直感しました。「目」だ、「瞳」だと。

ちなみに、英語で「虹彩」を意味するのは“iris”という単語ですが、その語源はギリシア神話の虹の女神「アイリス(イーリス)」に由来します。神話において、虹は「この世とあの世を結ぶ橋」として表象されており、この橋を司るのが「アイリス」なんですね。これらは後になって知った情報ではありますが、新たなお墓のモチーフとして、瞳や虹彩にたどり着いたのも、偶然ではないのかもしれません。

―そこから創業に向けて、急ピッチで準備を進められたわけですね。

柿田 ええ。有志メンバーの一人だった船木に加え、グラフィックデザイナーの下邨を誘って、12月にキックオフ。社名を決め、ドメインを取得し、会社のロゴを制作。その傍らで定款など登記の書類を揃え、2021年1月4日にeach toneを設立しました。私たち3人は、スキルセットも性格も三者三様。バランスのいいチームができたと自負しています。

船木 柿田のプレゼンを聞き、アートに賭ける想いやサービスの構想を耳にしたその瞬間から、私には「この人と一緒に仕事をすることになる気がする」という直感がありました。柿田のビジョンと自分の想いに相通ずるところがあったのだと思います。それにしても、ここまでとんとん拍子に話が進み、創業やサービス立ち上げに至るとは、当初は夢にも思いませんでした。柿田も下邨も、やる時は寝ずに頑張ったり、飲まず食わずで飛ばすので、すごいスピードなんです。

下邨 「DOORプロジェクト」は、1年の受講期間で完結する“プログラム”ではなく、継続的に取り組むべき「プロジェクト」です。柿田が「バーチャル墓地」の構想を温めていることはもともと知っていましたし、同プロジェクトを通して知り合った仲間たちと何かしらの実践を続けていきたいと思っていたんです。アートやデザインの持つ“課題解決力”を、人間の死を巡る問題にも活かしていきたい。迷いはありませんでした。

柿田がCMA(チーフ・マネージング・アーティスト)、私がCDA(チーフ・デザイニング・アーティスト)、船木がCPA(チーフ・プランニング・アーティスト)というように、当社のメンバー全員に“アーティスト”という肩書きがついています。名刺をつくるときに皆でいろいろ考えたわけですが、アートの語源はラテン語の「ars(技・技術・技芸)」です。美大・藝大・音大を出ているかどうか、あるいはアートを生業にしているかどうかにかかわらず、専門的な「技」を持っている人は誰もがアーティストなんですね。その根底には、仕事を通じて新たなコンセプトを表現していきたいという思いがあります。

下邨尚也

アート思考で、答えのない課題に寄り添う

―each toneが目指す方向性・展望について聞かせてください。

柿田 世界は“答えのない課題”に満ちています。着地点の見えない課題や判断の軸がわからない課題、良し悪しや損得では測ることのできない事象、科学やロジカルシンキングだけでは十分に理解することが難しい事象は少なくありません。こうした課題や事象に真正面から向き合い、思考を重ね、ソリューションを生み出すために、藝術の力が役立ちます。もとより藝術は、答えのない課題に寄り添うことが得意なのです。私たちは「~藝術の力を社会へ~」という理念のもと、アートプロジェクトの形でさまざまな事業を立ち上げ、社会的な課題の解決に寄与していきたい。まだまだ構想段階ではありますが、DOORプロジェクトでトライアルを始めている認知症の方々との共存のための提案、金融業界のさまざまな不合理を解消するための取り組み、SNSで紡ぎだされる関係性とティーンズのコミュニケーションの在り様など、ジャンルの壁を超えたプロジェクトを展開していく予定です。

下邨 「víz PRiZMA」は、目の虹彩という視覚情報をベースとしたサービスですが、今後は、声紋の波形をアルゴリズムによって解析し、ゆらぎのある音楽を生成するサービスなど、聴覚情報ベースのサービスにも取り組んでいきたいと思っています。カタチのハッキリしないものにカタチを与え、唯一無二の“個”の表現として後世に語り継いでいく。これこそまさしく、アートや祈りの本質であり、私たちに課せられたミッションです。解像度の高い情報をキャッチしながら、さまざまなメディアを通してカタチのないものを表現し、明確なコンセプトを与えることで、社会的課題の解決に寄与していきたいと思っています。

船木 アートには、生きづらさを感じている人々を癒やすとともに、決断をプッシュしてくれるパワーがあると感じます。ロジカルな要素とエモーショナルな要素の絶妙なバランスといいますか、右脳と左脳が“バンっ”と融合する感じといいますか、“カチッと”と“フワフワ”の共存といいますか、言葉にするのは難しいのですが、ビジネスとアートという、本来であれば相反する要素を絡み合わせることによって社会的な課題の解決を図ること。チャレンジングな課題ではありますが、これからの時代になくてはならない仕事だと感じています。将来的には、一人でも多くのお客さまに「each toneがはじめるサービスだから試してみよう」と言っていただけるよう、会社そのもののブランドイメージを高めていきたいですね。

―挑戦の連続ですね。

柿田 ええ。新しいことに挑戦できるのは、最高の贅沢です。
私はこれまでNTTやアクセンチュア、NTTドコモ、日産自動車を経て、スタートアップの立ち上げ支援等に携わってきました。技術革新の最前線で、海外展開や新規サービスの立ち上げ、ターンアラウンド、グローバル人事戦略など、ゼロイチに近いチャレンジを繰り返す中で、気づいたことがあります。“これをやれば必ずうまくいく”というような十分条件、言いかえれば“成功の鉄則”の類は存在しないが、うまくいった挑戦に共通する必要条件は存在する。そして、それは「仕事が楽しくて仕方がない」、やらなければいけないからやるのではなく「好きだから、とことんやる」といった、テンション高い“モード(雰囲気)”の醸成だということです。今後、様々な困難にも直面するとは思いますが、与えられた状況を皆で面白がりながら、全速力で走り抜いていきたいと思っています。

each toneメンバー

【each tone】 https://each-tone.com
【víz PRiZMA】 https://viz-prizma.com
【mail】 contact@viz-prizma.com
【企画・構成】 土屋 明子
【インタビュー・執筆】 以可多屋
【撮影】 宮原 一郎

【メディア掲載情報】『とっぴぃ』2021年4月 春号 No.114

2021年4月 春号 No.114の“豊島区がもっと好きになる情報誌”『とっぴぃ』(発行:創発としま)の、日頃お世話になっているRYOZAN PARK様ページに、弊社記事が掲載されました。

「藝術の街 豊島区で、イノベーションを起こす藝術ベンチャー」として、関わらせて頂いている、街・コミュニティー・弊社がローンチ予定のサービスについて書かせて頂きました。

豊島区がもっと好きになる情報誌 とっぴぃ 誌面