曖昧な信念

風が吹くことが多い地域では、風の呼称が多数存在します。
雨が降ることが多い地域では、雨の呼び方が様々あります。
香りに文化的重点をおく地域では、香りを表現する言葉が多彩です。

さまざまな言語において、ある特有の事象や状況に注目し、それを表す他言語にはなかなか翻訳できないニュアンスがあります。

ブラジル音楽が好きな私が、例に挙げるとしたら、ポルトガル語の「saudade」。
こちらは、辞書をひくと、“郷愁,望郷,懐旧の念,思慕,ノスタルジー,懐しさ(現代ポルトガル語辞典/白水社)”とあります。
けれども、ひとことでは言い表せないくらいの、複雑な感情を含んでいます。例えばそれは、日本語の「粋」が英語で「cool」や「chic」と翻訳されて、ちょっと違うなぁと日本人が感じるのに似ているかもしれません。

私はこういう、雰囲気というか、観念というか、感覚みたいな、不確かなものに惹かれます。
まだ名前の付いていない感情に名前をつけるような。
香ってくる匂いをカタチにしたらどうなるのだろうとか。
タマムシの羽の虹色を伝えるにはどんな音にしたら良いか。

人々の持っている定規の目盛りやその単位は、それぞれ違うでしょうから、その誤差に、クスッとしたり、ガクッとしたり、ドキッとしたりするわけです。

取り留めもない文章になりましたが、下邨は普段こんなことをボケッと考えており、これからもそうなのだろうな、と思います。

最後に、今回の投稿の着想を与えてくれた絵本をご紹介して終わります。

『翻訳できない 世界のことば』エラ・フランシス・サンダース 画・著/前田まゆみ 訳/創元社 刊

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